[Vol.1686] 世界大分断で金(ゴールド)長期上昇へ

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。80.31ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,173.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は14,380元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年04月限は631.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1234.2ドル(前日比1.70ドル縮小)、円建てで5,897円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月14日 18時41分時点 6番限)
10,317円/g
白金 4,420円/g
ゴム 338.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「世界大分断で金(ゴールド)長期上昇へ」
前回は、「近年の株と金(ゴールド)の関係」として、MSCIオールカントリーワールドインデックスと金(ゴールド)の価格推移について述べました。

今回は、「世界大分断で金(ゴールド)長期上昇へ」として、リーマンショックを起点とした世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ)について述べます。

筆者は特に2010年ごろから、市場環境が急激に変化したと考えています。株も金(ゴールド)も市場と名の付くもの、ほとんどの環境についてです。

以下の通り、リーマンショック後に西側諸国が行った経済回復・株価上昇のための策が株高を支えた一方で、それらの策が非西側との分断を深めてしまったり(石油否定は非西側諸国に大きなダメージを与えた)、世界的なSNSの普及によって大衆の思惑が各地で噴出したりしたため、世界の民主主義が行き詰まってしまったと考えています。

この図は、株高の中で金(ゴールド)高が進んだことの一端を説明しています。西側と非西側の分断はそれ自体が「有事ムード」を強め、同時に分断が一因となって発生したウクライナ戦争やイスラエル・ハマスの戦争も同ムードをさらに強め、金(ゴールド)相場は上昇圧力を受けてきました。株高の中でこうした動きが同時進行してきたのです。

2010年ごろから世界の民主主義が変調をきたしたことは、V-Dem研究所(スウェーデン)が毎年公表するデータで確認することができます。

同所は、選挙制、自由主義、参加型、熟議型、平等主義の各分野の民主主義の度合いを数値化する活動を続けています。この中の自由主義に関わるデータが「自由民主主義指数」(Liberal democracy index)です。先週、同所は2023年のデータを公表しました。

同指数は0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど民主的な度合いが低く、1に近ければ近いほど民主的な度合いが高いことを示します。

同指数の世界平均(2023年は179カ国)は、1945年の第二次世界大戦終結を機に上昇し始め、1990年前後の冷戦終結を機に上昇に拍車がかかりました。このことは、この指数が世界全体の民主主義の傾向を指し示す指標になり得ることを示唆しています。

筆者が指摘した2010年ごろから、低下が始まりました。リーマンショック後の西側の対応、そして世界的なSNSの普及などがきっかけで始まったとみられる民主主義の行き詰まりを、示唆しています。

同指数が0.4以下の比較的民主的な度合いが低い国の数と0.6以上の比較的民主的な度合いが高い国の数の推移を確認すると、2010年ごろからそれまで減少してきた前者が増加に転じ、増加してきた後者が減少に転じました。

世界では、民主主義を正義と疑わない西側諸国と同じ考えを持つ国の数が減り、反対の考えを持つ国の数が増えていることがうかがえます。2010年ごろ、西側と非西側の間に分断が出現し、その後その分断が深まったことを、自由民主主義指数の推移は示しています。

図:リーマンショックを起点とした世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ)
図:リーマンショックを起点とした世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。