[Vol.1692] 8年ぶりに到来した「金利がある世界」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。80.96ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,167.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は14,440元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年05月限は629.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1256.35ドル(前日比3.95ドル拡大)、円建てで6,164円(前日比変わらず)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月25日 17時12分時点 6番限)
10,545円/g
白金 4,381円/g
ゴム 319.1円/kg
とうもろこし 39,570円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「8年ぶりに到来した『金利がある世界』」
前回は、「『出し渋り』懸念で価格は長期上昇か」として、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移について述べました。

今回は、「8年ぶりに到来した『金利がある世界』」として、無担保コール翌日物レートの推移(月末、2024年3月は21日の確報値)について述べます。

「中銀ウィーク」とされた先週、日本銀行はマイナス金利政策の解除を決定しました。3月19日のことでした。翌営業日の21日には、「0から0.1%程度で推移するよう促す」とした無担保コール翌日物金利は0.074%となり、以下のとおり2016年3月以来のプラス圏に浮上しました。

植田日銀総裁はマイナス金利解除の背景の一つに、賃金と物価の好循環が安定的・持続的に見通せる状況になったことを挙げました。マイナス金利政策などの景気回復を目的とした大規模な金融緩和は「その役割を果たした」とも述べました。こうしておよそ8年ぶりに「金利がある世界」が到来しました。

マイナス金利政策解除は、期待と不安の両面をもたらしています。マイナス金利政策解除は日本経済が回復していることの証であり好ましい、今後は市中のさまざまな金利が上向いて銀行などの金融機関の収益が改善しそう、物価高の一因である円安が是正されそう、などの期待が膨らみつつあります。

一方で、市中のさまざまな金利が上昇した場合は個人や企業の資金調達が難しくなってしまう、などの不安の声も聞かれます。今回の日銀のマイナス金利解除決定で、日本は今「悲喜こもごも」状態にあると言えます。

金利動向と関りが深いと考えられている金(ゴールド)相場の今後の価格動向において、とある思惑が浮上しています。マイナス金利解除によって円預金の妙味が増す期待が高まり、円建て金(ゴールド)を保有する妙味が相対的に低下するのではないか、という思惑です。

マイナス金利時代、金(ゴールド)は注目を集める機会を得ていました。金(ゴールド)が背負っている金利が付かないというデメリットが薄まるためです。しかしマイナス金利解除によって、薄まったデメリットが元に戻ってしまうのではないか、という思惑が浮上しています。今後、円建て金(ゴールド)を保有する妙味は低下してしまうのでしょうか。

図:無担保コール翌日物レートの推移(月末、2024年3月は21日の確報値) 単位:%
図:無担保コール翌日物レートの推移(月末、2024年3月は21日の確報値) 単位:%

出所:日本銀行のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。