週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比1.16ドル安の85.86ドル、ブレント原油は0.75ドル安の90.47ドルとなった。

 前週末の海外原油はイランとイスラエルの軍事衝突が懸念される中で中東の地政学リスクが意識され堅調な推移となった。また、米雇用統計が堅調な内容となり株高進行したことも好感された。

 先週の原油相場はハマスとイスラエルの停戦協議が続いているとの報や直近の上昇に対する利食いの動きから売りが先行した一方、イラン・イスラエル間の緊張感の高まりや供給逼迫懸念が支えとなる中で上昇すると下げ幅を縮小する展開となった。週明けはイスラエルがガザ地区南部から部隊を撤収し、ハマスとの停戦協議を続けていると伝わったことが重しとなり軟調な推移となった。翌9日はイランがイスラエルへの報復攻撃を今のところ見送っているほか、ハマスが仲介役のエジプトとカタールから新たに提示された休戦案を精査する意向を表明したことから地政学リスクが後退し上値重い推移となった。翌10日はイランによるイスラエルへの報復攻撃が迫っているとの観測が支えとなったほか、ハマス指導者の息子3人がイスラエルによる空爆で死亡したと伝わり、停戦交渉が難航するとの思惑が強まったことから買い優勢となった。週末にかけては堅調な米経済指標を受けて早期利下げ期待が後退しており、ドル高進行したことが嫌気され軟調な推移となった。

原油チャート

 今週の原油相場は上値を伸ばす展開が想定されそうか。イスラエルがハマス最高指導者の息子を空爆で殺害し、停戦交渉が進展する可能性が大きく低下しているほか、シリアのイラン大使館を空爆したイスラエルに対するイランの報復攻撃が間もなく実行されるとの警戒感が意識される中で、中東の地政学リスクが高まっている。また、メキシコが原油輸出の削減を表明しているほか、実行する可能性は低いとみられているがイラン革命防衛隊がホルムズ海峡の閉鎖を仄めかしたことで供給ひっ迫懸念が高まっていることも支援材料となりそうだ。直近の米経済指標の堅調さから利下げ期待が後退し、ドル高進行していることは重しとなりそうだが、中東の地政学リスクが意識される中で下値は限定的となりそうだ。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。