[Vol.1710] 2010年の世界分断深化元年が事の発端

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。81.84ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,395.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は14,590元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年06月限は642.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1440.35ドル(前日比6.15ドル拡大)、円建てで7,143円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月18日 18時30分時点 6番限)
11,815円/g
白金 4,672円/g
ゴム 310.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「2010年の世界分断深化元年が事の発端」
前回は、「情勢混迷で金(ゴールド)上昇は継続」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)について述べました。

今回は、「2010年の世界分断深化元年が事の発端」として、2022年以降の金(ゴールド)、原油、米国株高の背景(筆者イメージ)について述べます。

足元の中東情勢の悪化は、どこから来たのでしょうか。今回の情勢悪化の主体であるイスラエルは、国連決議を経てユダヤ人国家として1948年に誕生しました。

その後、イスラエルは武力でユダヤ人居住区域を広げ(アラブ人の居住区域が縮小)、世界中に離散していたユダヤ人をかつてのパレスチナの地に呼び戻しはじめました(シオニズム運動)。国連安保理では何度も武力行使を止めるよう採決が行われましたが、そのたびに米国が拒否権を発動してイスラエルを擁護しました。

足元の中東情勢の悪化は、イスラエルという国家の誕生を起点としたユダヤ人の帰還と武力によるアラブ人居住区縮小の歴史の延長線上にあると言えますが、筆者はこれに加えて、下図の通り2010年ごろに目立ち始めた「世界分断」が関わっていると考えています。

リーマンショック後の西側の対応やSNSの普及が世界の分断を生み、そして深め、それが複数の戦争の勃発・激化の一因になった、という考え方です。

リーマンショック後の西側の対応とは、ESG(環境、社会、企業統治)を武器として利用し、産油国や強権的な体制を敷く非西側の国々を強く批判したことです。ESGのビジネス利用によって経済回復・株価上昇は進んだものの、武器利用がもたらした負の影響によって、西側と非西側の分断は深まってしまいました。

SNSの普及とは、スマートフォンの利用者が世界的に増加していく中で、同じ思想を持った者同士がつながり、異なる思想を持った人をリアルの場で攻撃して国家を転覆させたり(アラブの春)、ポピュリズム(大衆迎合)を逆手に取って選挙で勝利するリーダーが誕生したりする出来事(2016年の米大統領選でトランプ氏勝利)が目立ったことです。そして、世界の民主主義は行き詰まりを見せ始めました。

これにより、民主主義を正義とする西側の影響力が低下し、西側と非西側の分断は深まってしまいました。民主主義の低下については以前の「[Vol.1686] 世界大分断で金(ゴールド)長期上昇へ」で述べています。

リーマンショック後の西側の対応やSNSの普及が生み、深めた西側と非西側の分断は、一時は西側の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)に加盟を検討し、現在でも西側諸国の支援を受けるウクライナと、歴史的に西側と相いれない関係にあるロシアの戦争や、国家誕生に英国が深く関わり、誕生後も米国に擁護され続けてきたイスラエルと、1979年の革命後に改めて西側と反発し合う関係になったイランの戦争勃発・激化の一因になったと考えられます。

そしてその上で、足元、金(ゴールド)や原油の価格が上昇していると言えます。

図:2022年以降の金(ゴールド)、原油、米国株高の背景(筆者イメージ)
図:2022年以降の金(ゴールド)、原油、米国株高の背景(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。