[Vol.1714] 食品価格高と戦争の共通の原因は世界分断

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。82.95ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,330.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,215元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年06月限は651.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1407.35ドル(前日比11.95ドル縮小)、円建てで6,980円(前日比56円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月24日 19時08分時点 6番限)
11,546円/g
白金 4,566円/g
ゴム 304.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「食品価格高と戦争の共通の原因は世界分断」
前回は、「産油国に絡む戦争は食品価格を押し上げる」として、産油国に絡む戦争勃発を起点とした食品価格高発生までの流れについて述べました。

今回は、「食品価格高と戦争の共通の原因は世界分断」として、「世界分断」が食品価格を高止まりさせた経緯について述べます。

筆者は、食品価格高と戦争には、共通の原因があると考えています。西側諸国と非西側諸国の間に存在する「世界分断」です。この分断がなければ、現在の食品価格高も戦争も、起きていないとさえ言えるでしょう。それくらい、「世界分断」は広範囲に強い影響を及ぼしています。

世界分断がもたらす影響を図示したのが、以下です。分断があることで西側と非西側の代理戦争が勃発しやすくなりました。米国が支援するイスラエルと、イランが支援する複数のイスラム武装勢力「抵抗の枢軸」の戦争はその例です。

ウクライナとロシアの戦争は、ウクライナが西側の代理、ロシアは非西側の代理ではなく、代表格が直接、戦争をしていると言えます。西側と非西側の分断は、こうした代理戦争のきっかけになっています。

こうした「産油国に絡む戦争勃発」だけでなく「資源国の出し渋り」もまた、世界分断がきっかけで起きていると言えます。分断があることで、資源を多く持っている非西側の資源国は、西側に有利にならないような行動をすることがあります。原油の場合は「原油の減産」です。

原油の減産は、OPECプラス(石油輸出国機構プラス)が原油価格をつりあげるために行っている、としばしば言われますが、このこと以外に、西側が有利にならないために行っている節があります。分断が生じていなければ、OPECプラスはここまでかたくなに減産を行うことはなかったでしょう。

農産物は輸出制限です。表向きは自国の食の安全保障のため、とされることが多いですが、実態は西側への出し渋りである場合があります。西側に課された制裁への応酬の意味でロシアが各種農産物の出し渋りを続けています。2022年秋には一時、インドが小麦の輸出制限をかけました。

非西側は、原油の減産や農産物の輸出制限という「出し渋り」を駆使することで、消費国が多い西側を強く揺さぶることができます。世界分断が存在する時代だからこそ、起きてしまうことだと言えます。それが、原油価格を高止まりさせたり、食品価格の上昇に拍車をかけたりしているのです。世界分断は物価高(インフレ)の元凶だと言えるでしょう。

図:「世界分断」が食品価格を高止まりさせた経緯
図:「世界分断」が食品価格を高止まりさせた経緯

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。