[Vol.1722] 「保有数量」は価格推移と同じくらい重要

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。79.65ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,314.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,240元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年06月限は617.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1323.9ドル(前日比13.80ドル縮小)、円建てで6,685円(前日比21円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月9日 19時02分時点 6番限)
11,592円/g
白金 4,907円/g
ゴム 309.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『保有数量』は価格推移と同じくらい重要」
前回は、「『低迷』が運用を好転させる場合あり」として、筆者が考えた積立シミュレーション(3パターンの累積資産額)について述べました。

今回は、「『保有数量』は価格推移と同じくらい重要」として、筆者が考えた積立シミュレーション(3パターンの累積保有数量)について述べます。

前回述べたとおり、累積資産額で低迷パターンが圧勝したのは、この取引が「積立」だからです。多くの場合、大まかな収益の計算は「保有数量×価格」で行います。積立の場合、毎月一定額を購入に充てるため、価格が変動すると購入する数量が変動します。

下のグラフは、暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターンの累積保有数量の推移です。最終的な保有数量は、暴騰パターンが421グラム(貴金属の積立を想定しているため、数量の単位はグラム)、暴落パターンが984グラム、低迷パターンが5,262グラムでした。低迷パターンは、暴騰パターンの13倍、暴落パターンの5倍になりました。

低迷パターンの価格は、取引開始から40年間、1,000円で低迷し続けました(2024年3月から2064年2月)。低迷パターンはこれを利用して累積保有数量を効率的に増やし、その増えた保有数量が決め手となり、資産の額で他を圧倒しました。

暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターンの月々の購入数量については、低迷パターンは、最後の10年間こそ価格が上昇したため月々の購入数量は減少したものの、価格が長期で低迷した取引開始から40年間は、月々の購入数量は高止まりしました。暴騰パターンの4.5倍もの購入があったタイミングもありました。

このシミュレーションは、積立投資では「価格低迷が月々の購入数量をいかに増やしてくれるか」を改めて教えてくれています。

さらに言えば、価格が「ゼロ円」に近づけば近づくほど、月々の購入数量は増加しやすくなります。仮に月々の投資額が9,835円(1万円の投資金で購入時の手数料1.65%を考慮)だったとして、価格が8,500円から6,500円に下がると、購入できる月々の数量は0.3グラム増えます。

価格が6,500円から4,500円に下がると(同じく2,000円下落)、同0.6グラム増えます。4,500円が2,500円に下がると1.7グラム増、2,500円が500円に下がると15.7グラム増加します。低迷パターンの月々の購入数量が常に高水準だったことは、こうした曲線的な傾向の上で起きたと言えます。

図:積立シミュレーション(3パターンの累積保有数量) 単位:グラム
図:積立シミュレーション(3パターンの累積保有数量) 単位:グラム

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。