[Vol.1746] 年々高くなる「安定」の難易度

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。78.73ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,330.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は15,805元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年07月限は605.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1375.75ドル(前日比8.05ドル拡大)、円建てで6,910円(前日比46円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月12日 18時44分時点 6番限)
11,722円/g
白金 4,812円/g
ゴム 353.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「年々高くなる『安定』の難易度」
前回は、「『協力宣言の詩』(抜粋)」として、OPECプラスの減産(イメージ)について述べました。

今回は、「年々高くなる『安定』の難易度」として、OPECと非OPEC産油国の協力宣言が7年を経過したことについて述べます。

OPECプラスが求める「安定」は、一定ではありません。2016年の「アルジェ合意」「ウィーン合意」の時代は、価格を上げることで「安定」を手に入れることができました。しかし、今は、原油価格をさらに上げることや、産油国間の結束を強めることが「安定」のために必要になりました。

「安定」を手に入れるための難易度は格段に上がっているのです。背景には、西側諸国が正義と疑わない「脱炭素」と、西側・非西側の「世界分断」があります。脱炭素下は、産油国の原油輸出量が減少し、国の存続が危ぶまれるため、今よりもさらに高い原油価格が必要です(収益を維持するため、数量の減少を単価の上昇で補う必要がある)。

では、産油国は原油価格がいくらであれば満足するのでしょうか。以下は、IMF(国際通貨基金)が集計・公表する、財政収支均衡のために必要な原油価格です。OPECプラスの一員として減産を実施している主要国について、言及されています。

OPECプラス内のOPEC側のリーダー格であるサウジアラビアは「93.3ドル」です。そして、サウジアラビア、アルジェリア、クウェート、イラク、アゼルバイジャンの平均が「85.0ドル」です。

100ドルを超えたり、50ドル近辺でも財政が均衡したりする、やや極端なケースを除けば、85ドルが多くの産油国が「安定」する価格と言えそうです。足元の水準では「安定」しないため、彼らは「安定」を求め、強い覚悟をもって減産を行っているのです。

西側諸国では、石油開発を積極的に行っている企業は環境への配慮がなされていないため投資を控えるようにしよう、プラスチック製品の消費量は減らした方が環境にやさしいのでビニール袋は有料にしようなどと、直接・間接、程度の大小問わず、石油を否定する動きが目立っています。こうした動きがまさに、彼らを不安定にし、彼らを厳格な減産に駆り立てているのだと言えます。

図:OPECと非OPEC産油国の協力宣言が7年経過(2023年12月10日)
図:OPECと非OPEC産油国の協力宣言が7年経過(2023年12月10日)
出所:OPECの資料より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。