OPECプラスが減産を継続する理由①

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反落。主要株価指数の反落などで。56.52ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,465.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年01月限は11,935元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。19年12月限は452.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで574.1ドル(前日比4.3ドル拡大)、円建てで1,998円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(11月11日 17時18分頃 先限)
 5,122円/g 白金 3,124円/g 原油 38,300円/kl
ゴム 177.8円/kg とうもろこし 23,500円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「OPECプラスが減産を継続する理由①」

今回は「OPECプラスが減産を継続する理由①」として、12月の産油国の会合で、2020年3月に終了し、4月以降も継続するかが協議される、OPECプラスの協調減産について書きます。

現在のOPECプラスに、減産を延長する動機はあるのでしょうか?

基本的には、生産コストが変わらない場合、単価である原油価格が上昇すれば、輸出時に得られる外貨が増えるため、OPECプラスにとって原油価格は高いほうが望ましいと言えます。

一方、今年1月半ば以降、原油相場は下値50ドルから上値63ドル前後のレンジ相場が続いていますが、生産国から安すぎる、消費国から高すぎる、などの価格に関する目立った不平・不満は出ていません。

ある意味、現在のレンジは、消費国と生産国双方が妥協できる価格帯と考えられます。生産国の目線で言えば、現在のレンジは、許容できる安値水準と言えそうです。

仮にそうであれば、OPECプラスに、原油価格を上昇させる効果がある減産を、あえて延長する動機はあるのでしょうか? 筆者が考える、原油価格を引き上げること以外の減産を延長する動機は、以下のとおりです。

1.原油相場の急落を防ぎ、株式や通貨などの市場に余計な混乱を生じさせないようにするため。
2.過剰に積み上がった世界の石油在庫を減少させるため。
3.米国の原油生産量が増加する中、世界の需給バランスが緩むのをできるだけくい止めるため。
4.減産という同じ行為を行うことで、OPECプラスの組織力を維持・強化するため。

以下のグラフは、2に関連するOECD石油在庫の推移です。

協調減産開始以降、OPECプラスは、過剰に積み上がったOECD石油在庫を削減するために減産を実施・延長すると繰り返してきましたが、OECD石油在庫は現在もなお、高水準にあります。

ここに、OECD石油在庫を削減するために減産を延長する、という減産延長を決定する動機が存在することがうかがえます。

図:OECD石油在庫 単位:百万バレル


出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。