[Vol.1764] 「株高」に不安を感じる個人投資家の方々

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。中東情勢緊張緩和観測などで。82.21ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,379.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,610元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年08月限は628.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1352.05ドル(前日比0.35ドル拡大)、円建てで7,077円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月8日 18時19分時点 6番限)
12,317円/g
白金 5,240円/g
ゴム 317.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『株高』に不安を感じる個人投資家の方々」
前回は、「先物市場の創設は盗難防止の機運を生む」として、金属スクラップ先物市場の創設の意義について筆者の考えを述べました。

今回は、「『株高』に不安を感じる個人投資家の方々」として、S&P500、金(ゴールド)、原油の価格推移を確認します。

7月6日(土)、楽天証券 25th ANNIVERSARY FES ~DAY1:投資戦略フェス~に参加し、たくさんの個人投資家の方々と直接、お話をしました。大変に楽しく、有意義な時間でした。また、筆者は中規模会場と小規模会場でそれぞれ約30分間、講演をする機会があり、個人投資家の皆さまがどの話題に強い関心があるのかを肌で感じることができました。今回から数回に分けて、同イベントの参加記を書きます。

当社のサービスの一つである「金・プラチナ取引」を訴求するブースは「駆け込み寺」の様相を呈していました。S&P500やオールカントリー関連の金融商品を保有しているが、米国株が暴落するかもしれず、その不安に対して何か策を講じなければならないと考えている方々が多く集まった印象を受けました。

同ブースで待機していた筆者を含むスタッフに声をかける方、ブース前で立ち止まって資料を手に取る方、ケースはさまざまですが、会話がはずんで「なぜ金(ゴールド)に興味を持たれたのか?」と聞くことができた方々のほとんどが「今の株高が不安だから」という趣旨の言葉を述べました。中には「(株価が)気持ちが悪いくらい上昇している」と述べた方もおられました。

教科書的には「株高は好景気の象徴」です。国内外の株価が高騰している今、なぜ不安を感じてしまうのでしょうか。「株価が高いことは悪いことではないように感じますが?」と尋ねると、複数のかたから「なぜ高いか分からない」「好景気を実感できない中で株だけが上がっている」という趣旨の返答がありました。

株価が上昇し、ご自身が保有されている金融商品の評価額は増えてはいるものの、その理由がわからず、実感もわかず、返って株価が暴落するのではないかという不安が増している、そしてその不安を解決し得る策の一つとして金(ゴールド)に関心を寄せられている、という状況だと感じました。

こうした声を受け、「もっとポートフォリオを分散したい方へ、コモディティの世界をご紹介!」と題した中規模会場での講演では、重点を置くポイントを変更しました。下の図で、異常とも言える米国株の上昇率が、金(ゴールド)や原油などのコモディティ(国際商品)価格の上昇率をはるかに上回っている様子を説明しました。

そして、半年から1年程度先の「思惑」を織り込んで推移するとされる株式が、2010年ごろにはじまった世界的なスマートフォンの普及に伴うSNSの利用拡大を受けた情報の受け手と発信者の関係の変化をきっかけとした「思惑優先」のムード拡大によって、異常なまでの、理由が定かでない、実感がわかない暴騰劇を演じていると、説明をしました。

図:S&P500、金(ゴールド)、原油の価格推移(1984年1月を100として指数化)
図:S&P500、金(ゴールド)、原油の価格推移(1984年1月を100として指数化)
出所:世界銀行およびブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。