トリプルレッドを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 足もとでは、「トリプルレッド」が固まり、積極財政が強まり、長期的な財政規律に向けた具体的な対策が議論されなくなるとの観測から米債務膨張懸念による米長期金利上昇を金相場は嫌気しているものの、本格的に格下げの動きが表面化してくれば、金にとっては買い要因となってくるだろう。

 米格付け大手ムーディーズ・レーティングスは2024年9月、米大統領選後の米政府の信用リスクを分析したリポートで、政治分断が続いて債務増加など財政の悪化に歯止めがかからない場合、現在の信用格付け「Aaa(トリプルA相当の最上位格)との整合性がとれなくなる」と指摘し、格下げの可能性を警告している。

 S&Pグローバル・レーティングスは2011年8月に、フィッチ・レーティングスも23年8月にそれぞれ、米国の格付けをトリプルAからダブルAプラスへと1段階引き下げ、金相場は強気で反応した。

 トランプ氏が掲げる関税強化策などが世界各国の企業業績や景気に与える悪影響を懸念する見方も根強く、世界的な不確実性の上昇に備える投資家は多い。

 マーケットは往々にしてオーバーシュートするものだが、「トリプルレッド」が正式に決まった現在、「トランプトレード」の賞味期限にも注意すべき時間帯に接近している。NY金相場は、前回(トランプ1.0)時の金の値動きパターンと自己相似型で推移している。底打ちまでの日柄・値幅の参考にしたい。買い場探しが、金の基本戦略。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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