[Vol.1866] パーミアンも継続的な生産増加は困難?

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。68.71ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,670.41ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年05月限は18,640元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年01月限は529.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1714.41ドル(前日比8.49ドル縮小)、円建てで8,238円(前日比32円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月5日 17時11分時点 6番限)
12,825円/g
白金 4,587円/g
ゴム 372.8円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,252円/mmBtu(25年3月限 11月19日17時18分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「パーミアンも継続的な生産増加は困難?」
前回は、「バッケン、イーグル・フォードは大きく後退」として、米シェール主要地区の原油生産量の推移を確認しました。

今回は、「パーミアンも継続的な生産増加は困難?」として、米シェール主要地区の待機井戸の数を確認します。

前回述べたとおり、仮にバッケンとイーグル・フォードのすぐの生産増加が難しいとなると、トランプ氏が述べる「掘りまくれ!」を実現するためには、パーミアンのさらなる生産増加が欠かせません。以下のグラフは、そのパーミアンの待機井戸の数です。

待機井戸とは、掘削は済んだものの、生産を開始するために必要な仕上げは終わっていない井戸のことです。仕上げは、井戸に水と砂と少量の化学物質を高圧で注入し、地中の一部を破砕(フラッキング)する作業のことです。

仕上げは掘削よりも費用が掛かるといわれています。また、一度仕上げをすると、生産を開始することが既定路線になってしまうため、仕上げ実施は原油相場の動向をにらみながら慎重に判断されます。そこで、掘削は終えたものの、仕上げのタイミングを計るなどの目的で「待機井戸」が発生します。

同時に、この待機井戸は、掘削を行わずにシェールの生産を可能にする在庫でもあります。原油相場の低迷や環境配慮をきっかけとした開発ムード停滞時でも、この在庫を使うことでシェールの生産にこぎつけることができます。

パーミアンの待機井戸は、2020年の新型コロナショックと翌年の環境配慮を重視したバイデン政権発足をきっかけに、急減したことが分かります。パーミアンの原油生産量が、原油相場の一時急落や環境配慮ムードの高まりの中でも増加し続けた一因が、待機井戸の切り崩しだったと言えます。

ただし足元、パーミアンの待機井戸は低水準にあるため、すぐさま原油生産を急増させることは難しそうです。

また、仮に「掘りまくれ!」の号令とともに、リグをフル回転させて掘削済井戸数を増やそうとしたとしても、もともと高水準にある同井戸数をここから急増させることは難しい可能性があります。

原油相場が2013年から2014年前半の水準である120ドル近辺に達すれば、パーミアンの掘削済井戸数は毎月600基に達する可能性はあるかもしれません(足元450基程度)。

しかし、月を追うごとに掘削できる地域が減少していることを考えれば、すぐではないにせよ、いずれ限界に達する可能性もあります。パーミアンとて、生産増加を継続させられるかどうか、不透明だと言えるでしょう。

図:米シェール主要地区の待機井戸の数 単位:基
図:米シェール主要地区の待機井戸の数 単位:基
出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。