[Vol.1898] 原油急落への願望はトランプ氏が打ち砕く

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。74.58ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,795.59ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,450元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年03月限は602.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1841.24ドル(前日比6.74ドル拡大)、円建てで9,144円(前日比46円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月27日 17時52分時点 6番限)
13,808円/g
白金 4,664円/g
ゴム 380.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,960円/mmBtu(25年4月限 12月19日17時25分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「原油急落への願望はトランプ氏が打ち砕く」
前回は、「トランプ2.0は世界分断を深化させる」として、2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認しました。

今回は、「原油急落への願望はトランプ氏が打ち砕く」としてトランプ氏が振りまく思惑とOPECプラスの原油生産プランがもたらす原油相場への影響を確認します。

トランプ氏の米大統領就任後、トランプ氏がインフレを抑え込んでくれるのではないか、という趣旨の発言を耳にしたり、こうした趣旨の記事を目にしたりします。

確かに、トランプ氏は、化石燃料を掘りまくれ、ウクライナ戦争を終わらせる、OPEC(石油輸出国機構)に原油価格の引き下げを要請する、などと相次いで発言をし、原油安・インフレ抑制を実現してくれそうなムードを醸し出しています。

とはいえ、以前の「[Vol.1849] 世界はトランプ氏にマウントされている」で書いた通り、トランプ氏は、両極端の事象を同時に繰り出してきています。つまり、原油安という片側の事象のみに注目してはいけないのです。

話題創出、気運向上、自国優先、交渉多用など、彼の得意分野が目立ちはじめると、明と暗、つまり正反対の事象が同時に出現します。

以下の図のとおり、トランプ氏が攻撃(口撃)するOPECが行っていることと並べてみても、やはり両面の事象があります。原油相場には上昇と下落、両方の圧力がかかっているのです。この点からも、原油安だけに注目したり、期待したりしてはいけないことがわかります。

現代の市場分析の常識ともいえる、複数の材料を俯瞰すること(鳥のように空から地上をまんべんなく見渡すこと)を改めて、認識する必要があります。

図:トランプ氏が振りまく思惑とOPECプラスの原油生産プランがもたらす原油相場への影響
図:トランプ氏が振りまく思惑とOPECプラスの原油生産プランがもたらす原油相場への影響
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。