[Vol.1910] 主要生産国に生産量減少懸念あり

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。70.92ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,938.31ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,605元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年03月限は593.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1884.46ドル(前日比4.26ドル拡大)、円建てで9,652円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月13日 17時59分時点 6番限)
14,447円/g
白金 4,795円/g
ゴム 366.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,355円/mmBtu(25年4月限 2月13日17時22分時点)

●カカオ豆先物(CFD) 月足  単位:ドル/トン
カカオ豆先物(CFD) 月足  単位:ドル/トン
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「主要生産国に生産量減少懸念あり」
前回は、「短期急騰要因と長期底上げ要因が同時進行中」として、食品における嗜好品に関わる国際商品の価格を押し上げている材料(2025年2月時点)を確認しました。

今回は、「主要生産国に生産量減少懸念あり」として、カカオ豆の主要生産国における生産量を確認します。

以下は、板チョコレートの主要な原材料であるカカオ豆の主要生産国における生産量の推移を示したグラフです。FAO(国連食糧農業機関)の統計によれば、生産量1位はコート ジ ボワール(生産シェア45%)、2位はガーナ(同12%)です。同じ西アフリカに位置するカメルーンは6位(6%)です。

コート ジ ボワールの生産量は1970年代半ばから増加の一途をたどっています。世界で増大するカカオ豆の需要を支え続けていることが分かります。一方、ガーナとカメルーンは2010年代半ばに頭打ち感が生じ、特にガーナについては減少が目立っています。

2022年から2023年ごろにかけて、西アフリカ一帯が、天候不順に見舞われました。これを受け、生産量が大きく減少する懸念が浮上しました。実際にガーナとカメルーンの生産量は大きく減少しました。コート ジ ボワールが大きな減少に見舞われなかった一因に、同国の収穫面積が大きく増加したことが挙げられます。

コート ジ ボワールは天候不順に強いように見えますが、実際のところ、単位当たりの収穫量を示す単収が、長期視点で低下しています(FAOの統計より)。

同国は、収穫面積を拡大させながら生産量を増やしているものの、単収が示す資産効率は低下傾向にあります。設備投資の減少や過去に発生した病害などの影響が、長期化している可能性があります。

また、ガーナにも懸念があります。ガーナでは違法な金(ゴールド)の採掘が横行し、カカオ豆の収穫地が縮小したり、河川や地下水などの周辺環境が悪化して生育に適した土壌が減少したりしていると、報じられています。

長期視点で、主要なカカオ豆の生産国は、安定したカカオ豆生産を続けることが難しくなっていると言えます。仮に短期的に天候不順の影響から回復できたとしても、長期視点の単収の低下や鉱物資源の掘削拡大などが重しとなり、生産量が思ったように増えない、減少する、などの傾向が目立つ可能性もあります。

図:カカオ豆の主要生産国における生産量 単位:百万トン
図:カカオ豆の主要生産国における生産量 単位:百万トン
出所:FAO(国連食糧農業機関)のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。