[Vol.1915] 第三の矢:「見えないジレンマ」浸透中

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.22ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,967.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,950元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年04月限は564.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1972.1ドル(前日比26.35ドル拡大)、円建てで9,630円(前日比39円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月20日 大引け時点 6番限)
14,298円/g
白金 4,668円/g
ゴム 375.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,355円/mmBtu(25年4月限 2月13日17時22分時点)

●NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「第三の矢:『見えないジレンマ』浸透中」
前回は、「第二の矢:中央銀行の買い越し長期化」として、中央銀行全体の金(ゴールド)買い越し量(1950~2024年)を確認しました。

今回は、「第三の矢:『見えないジレンマ』浸透中」として、2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認します。

以前の「[Vol.1912] 金(ゴールド)相場、高値更新続く」で述べたとおり、2010年ごろ以降から続く長期の上昇トレンドを支える要因の一つ「第三の矢」は、超長期的な上昇トレンドの土台を担う要素です。同回の図で示したとおり、「見えないジレンマ」がそれにあたります。

ここで言う「見えないジレンマ」とは、人類が良かれと思って生み出したものの、知らず知らずのうちにマイナスの要素を含むようになった事象です。ESG(環境・社会・企業統治)とSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がそれに当たります。

ESGは、西側の主要国が提唱した投資先を選別する際の考え方です。リーマン・ショックで負ったダメージを回復させることに大きな貢献をしました。しかし、行き過ぎた環境配慮や行き過ぎた人権配慮という「ESGの武器利用」が横行し、責め立てた一部の西側主要国と責め立てられた一部の非西側諸国との間に、大きな溝が生まれてしまいました。

良かれと思って世に出たESGが、知らず知らずのうちに、世界分裂に加担する、マイナスの要素を含むようになっていました(もちろん、プラスの面もある)。

また、SNSが世界的に普及したことで、世の中から建設的な議論が後退する懸念が生じるようになりました。SNSでは、誰でもいつでもどこでも、簡単に感情を噴出させることができます。そして、ニセ情報が拡散され、社会が混乱する場合もあります。

しばしばSNSは、「数」が勝敗を分ける選挙のためのツールになることもあります。候補者は支持を集めたいがあまり、大げさな情報を発信し、それにより人々が意図せず扇動されるケースがあります。

情報技術のさらなる発展を願う人々の思いを実現すべく、良かれと思って世に出たSNSが、知らず知らずのうちに、世界の民主主義を脅かし、世界分裂に加担するマイナスの要素を含むようになっていました(もちろん、プラスの面もある)。

こうした流れは、2010年ごろに発生し、現在に至るまで、世界分裂を加速させる一因として存在し続けています(トランプ政権はこの流れに拍車をかけている)。もともと良かれと思って始まったこと、目に見えにくいこと、プラスの要素も含まれていることなどが原因で、認識されにくいものの、実際にはしっかりとジレンマは存在します。

この「見えないジレンマ」は、今後も複数の文脈で、金(ゴールド)相場に超長期視点の上昇圧力をかけ続けると、考えられます。

図:2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
図:2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。