週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比4.04ドル安の65.57ドル、ブレント原油は4.95ドル高の68.77ドルとなった。

 前週末の海外原油はトランプ大統領が2日にも相互関税を発動するとの警戒感から景気後退懸念が高まる中で軟調な推移となった。

 先週前半は堅調に推移する場面も見られたが、週後半には相互関税の詳細が発表されたことが重しとなったほか、OPECの増産計画が嫌気され急落する動きとなった。週明けはトランプ大統領が休戦に合意しないロシアへ不満を表し、ロシア産原油の買い手に20~50%の関税を課すことを検討していると伝わったことが支えとなったほか、イランが核開発の制限に応じなければイランを爆撃し、二次関税を課すと警告したことで地政学リスクが意識され堅調な推移となった。翌1日は米ISM製造業指数が予想を下回り、節目の50を割り込んだことが嫌気されたほか、相互関税の発動を控える中で戻り売りに押されると反落する格好となった。翌2日は米国時間では押し目買いや株価の上昇などを受けて反発したものの、引け後に相互関税の詳細が発表されるとリスクオフムードが強まり急反落する動きとなった。相互関税はすべての輸入品に対して一律10%と、国・地域ごとに算出した関税率が上乗せされる2段階方式で導入される模様。日本は24%上乗せとなった。週末にかけては関税の影響で景気後退懸念が高まっていることが重しとなったほか、OPECプラスが5月から日量13.5万bblの増産計画を41.1万bblの増産に拡大することで合意したと伝わったことが嫌気され急落する格好となった。

みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は下値を探る展開が想定されそうか。トランプ大統領がすべての国に対して一律10%の関税と、日本や中国、欧州などには上乗せして関税を課す2段階関税の導入を発表したことで景気悪化懸念が強まった。また、OPECプラスが5月から日量41.1万bblの増産と、自主減産幅の縮小を加速することで合意したと伝わったことから供給過剰への懸念が強まったことも重しとなった。当初の計画では日量13.5万bblの増産見通しだったため、サプライズ合意となった模様だ。景気悪化による需要の減少と産油国の増産開始となれば石油需給の緩和は避けられず、警戒感が高まっている。一方で関税が即時ではなく、5日に一律の10%、9日に上乗せ分が発効される見通しとなっており、交渉次第で条件が緩和されれれば相場が持ち直す可能性もあるが、テクニカル面ではWTIベースで2022年以来数度にわたって下値支持線となっている65ドルを割り込んでおり、さらに急落する展開も想定しておきたい。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

岡地株式会社
国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。