[Vol.2048] 地動説が市場を支配するようになった背景

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。63.37ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。3,597.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は15,960元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年10月限は481.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2172.9ドル(前日比7.50ドル縮小)、円建てで10,836円(前日比44円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月4日 17時36分時点 6番限)
17,053円/g
白金 6,217円/g
ゴム 318.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 日足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 日足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「地動説が市場を支配するようになった背景」
前回は、「金(ゴールド)市場の天動説と地動説」として、金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマと「天動説」「地動説」について、確認しました。

今回は、「地動説が市場を支配するようになった背景」として、海外金(ゴールド)現物価格の推移(1975年1月7日~2025年8月29日)を、確認します。

金本位制を旨としたブレトンウッズ体制が崩壊し、金(ゴールド)相場が市場の原理に基づいて自由に動けるようになったのは1971年のことでした。

その後、1970年代後半に中東近辺で複数の有事が発生し、1トロイオンス当たり200ドル前後だった金相場は瞬間的に800ドルを超えました。ここが、資金の逃避先が求められる有事発生時に金(ゴールド)に注目が集まる「有事の金」の出発点でした。

また、中東での有事を受けて原油相場が急騰し物価高が懸念され、物価高という相対的な通貨安を補うと目される無国籍通貨が物色される時に金(ゴールド)に注目が集まる「インフレ時は金」の出発点でもあったと言えます。

その後、中央銀行からの潤沢な資金供給もあり、自由経済・民主主義を掲げる国々の経済は膨張しはじめました。そして1980年代のアジア、1990年代の米国の株価指数はみるみる上昇しました。

そこで見向きもされなかったのが金(ゴールド)でした。金利や配当が付かない金融商品は保有するメリットがない、社会は好景気だから有事など気にすることもない、インフレは懸念されるがそれは好景気がきっかけだから悲観的になる必要もない、これらが市場の総意でした。ここが「株と金は逆相関」の出発点だったと言えます。

かくして、「天動説」が完成しました。しかし、2000年ごろから、世界を取り巻く環境は大きく変化し始めました。特に2010年ごろ以降は、以下の経路をたどり、地動説の一翼を担う、中長期・超長期視点のテーマをきっかけとした圧力が大きくなり始めました。

図:海外金(ゴールド)現物価格の推移(1975年1月7日~2025年8月29日)
図:海外金(ゴールド)現物価格の推移(1975年1月7日~2025年8月29日)
出所:LBMAおよび国内地金大手のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。