NY金、急落後の見通し

著者:菊川 弘之
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 NY金(4月限)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて堅調となり、一代高値(2/24:1691.7ドル)更新したが、2月末には米疾病対策センター(CDC)が国内のコミュニティーでの感染拡大の可能性を警告。パンデミック(世界的流行)に対する懸念からNY株価が急落すると、換金売りが出た。金融市場はパニックに陥っており、金相場は現金を確保(キャッシュ化比率引き上げ)しようとする投資家の利益確定の売りを浴びた格好だ。

 世界保健機関(WHO)は新型肺炎の世界全体の流行リスクについて評価を「非常に高い」に引き上げた。既存レポートやTVで「満月底・新月天井」の可能性を指摘していたが、内外共に金相場は、このサイクルに準じた値動きとなった。次の満月は、3月10日。この時間帯に向けて、世界的な株価が落ち着きを見せてくると、金の換金売りも一服する。

 リーマンショック時も、今回と同じように金は、リスク資産として損失補填的に売られたが、その後の切り返しは、最も早く大きかった。

 昨晩のNYダウは8営業日ぶりに急反発。上げ幅は2018年12月26日(1086ドル)を上回り過去最大だった。各国主要中銀が早ければ今週にも協調利下げに踏み切る可能性が意識され、新型コロナウイルスによる景気減速を和らげるとの期待が強まった。大型のハイテク株を中心に幅広い銘柄に買いが優勢となった。

 今回の株価の自律反発がどの程度まで上値を伸ばせるか? その後、戻りを売られた際に、今回付けた一番底候補を維持できるか否かが焦点となる。リーマンショックのように米リセッション入りとなるような展開なら、改めて金は買い直されるだろう。一方、新型肺炎感染拡大が落ち着き、米利下げなどの効果などから、株価が一番底候補を割り込むことなく、再度上昇トレンドに回帰するなら、金の戻りは鈍くなる。

 3月は、金にとってもNY株価にとっても、大きな流れの分水嶺となる時間帯となる。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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