NY金、急落後の見通し

著者:菊川 弘之
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 中国の2月製造業PMIは35.7とリーマンショック時を下回る過去最低となった。また2月の自動車販売は前年比9割減ペースだが、感染者数が減少し続ければ、4~6月の生産急回復も期待される。財政赤字対GDP比は6.1%と悪化しているが、政府債務残高は対GDP比55.6%と主要国の中では最低水準であり、さらなる発動の余地は十分にある(IMF2019年10月推計値)。2月に入ってからの20日間で、中国人民銀行は早急で、かつ巨額の金融緩和策を取ってきた。民主主義国家では、なし難い強権発動が感染を遮断し、経済の後退を短期で抑制する可能性も浮上している。

 一方、FTなどで新型ウィルス問題が習近平強権体制にとって、チェルノブイリと同じような役割を果たすかもしれない、との指摘が報じられている。

 チェルノブイリ原発事故は、①情報隠蔽による人命の喪失、②技術・生産体制・ライフラインシステムの欠陥露呈、③混乱収束の過程での膨大なコスト、等を引き起こし、5年後のソ連体制を崩壊に導くきっかけとなった。

 習近平政権が延期となった全人代を無難に終えることができるか否かにも注目したい。

 14州の予備選などが集中する天王山「スーパーチューズデー」を前に、民主党候補指名争いでエイミー・クロブシャー上院議員と、ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長が撤退表明。ともに穏健派のバイデン前副大統領の支持に回った。

 中道派が首位を走る左派サンダース上院議員をストップすることができるのか否かが焦点。バイデン候補とブルームバーグ候補で、票が分かれてしまえば、いわゆる「サンダーズ・リスク」も意識される。

 ただし、サンダース候補で民主党が一本化するなら、現職のトランプ大統領が有利との思惑もマーケットでは強く、サンダース勝利となった場合、マーケットが嫌気するリスクは小さいかもしれない。一方、スーパーチューズデーで、民主党の候補が一本化できない混戦が長引く可能性も高い。
 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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