4月の世界の石油需給バランス、予想を超える供給過剰

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反落などで。31.59ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,736.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,330元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年07月限は267.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで878.35ドル(前日比13.25ドル拡大)、円建てで3,231円(前日比26円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(5月19日 19時28分頃 先限)
 6,017円/g 白金 2,786円/g 原油 25,000円/kl
ゴム 153.1円/kg とうもろこし 22,300円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「4月の世界の石油需給バランス、予想を超える供給過剰」

今回は「4月の世界の石油需給バランス、予想を超える供給過剰」として、先週、EIA(米エネルギー省)が公表した短期見通しに収録された、世界の石油供給量と消費量から計算した、世界の石油の需給バランスについて書きます。

世界の4月の石油の消費量は、日量7634万バレルでした。この量は昨年12月の日量1億0205万バレルよりも、2500万バレル以上(25%超)、少ない量です。

この世界の石油消費量の急減が主因となり、需給バランスは、大規模な供給過剰になりました。

5月に公表された4月の需給バランスの実績値は、日量2281万バレルの供給過剰で、先月公表された見通しの日量1543万バレルを大きく上回る、“予想を超えた悪化”でした。

今後、予想を超えた悪化が、原油相場の反発に寄与する、需給バランスの均衡・あるいは供給不足化するタイミング、において発生しないか、懸念されます。

世界の石油の消費量が、新型コロナウイルスの影響を受けて最も減少するのは、2020年4月と見込まれています。(同短期見通し)

つまり、現時点で、世界の石油の消費量の“最悪期”は去った、とされているわけです。これを根拠に、需給バランスは、年末にかけて均衡・あるいは供給不足化する方向に向かうと予想されているわけです。

しかし、現在も新型コロナウイルスの感染拡大が続いている、インド、ロシア、ブラジルの石油の消費が回復するか、まだ不透明と言えます。

その意味では、世界全体の石油の消費量が回復しはじめるタイミング、需給バランスが均衡・供給不足化するタイミングが、予想を超えた悪化、つまり、先延ばしとなる可能性があります。

原油価格が、期待先行ではなく、実態を伴った安定した上昇を演じるためには、需給バランスが均衡・供給不足化することが必要です。

予想を超えた悪化が、需給バランスが均衡・供給不足化するタイミング、で起きないことが望まれます。

図:世界の石油需給バランス(供給-消費) 単位:百万バレル/日量

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。