金相場、調整局面も下値は限定的か?

著者:菊川 弘之
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 国際通貨基金(IMF)によると、世界各国の2020年の国内総生産(GDP)に対する公的債務残高の比率が、第2次世界大戦直後を上回る見通し。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国が景気を下支えする大規模な財政出動に踏み切っているため。先進国、新興国ともに1946年の水準を上回る見通し。

 20年の先進国(日米欧など27ヵ国)のGDPに対する債務残高の比率は前年よりも23・5ポイント上昇し、128・2%となる。1946年に記録した124・1%を上回る公算。新興国(25ヵ国)も、前年よりも10ポイント高い62・8%になり、過去最高水準になる見込み。世界各国が新型コロナウイルスに対応する経済対策総額は、少なくとも11兆ドル(約1170兆円)に及ぶと見られる中、米国が追加経済対策を検討しており、各国の公的債務残高は、さらに拡大する可能性。

 新興国ではレバノンなど債務不履行に陥る事例も出始めており、将来的な長期金利上昇に伴う信用リスク・財政危機などが懸念されていることが、足元の金相場の下値を支えている一因でもある。

 新型コロナウイルス感染拡大も一服感が出ており、マーケットの関心は、米大統領選挙に移行していくだろう。11月の米大統領選挙に向けて、金融・財政・地政学など世界的に不安定・不確定要因は多く、金の安値は売り込まれるのではなく、押し目を買い拾う動きが勝るのではないか?

公的債務の対GDP比

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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