金相場、調整局面も下値は限定的か?

著者:菊川 弘之
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 内外共に終値ベースで、8月安値を割り込むと、短期的にはテクニカル売りを巻き込んだ動きも想定されるが、押し目は改めて買い直されると見る。

 米中対立は冷戦との見方がある一方、米国の政治学者ジョン・ミアシャイマー氏は、「米ソ冷戦の先例で米中関係の緊張を理解するのは間違い。冷戦期は、数千もの核兵器を持った強大な米ソの軍隊が欧州で対峙しており、全面戦争が起こる可能性は高くなかったが、米中間で衝突が起こりうる可能性は冷戦期よりも高い。中国は旧ソ連のように世界を破滅させるほどの核兵器を持っておらず、核抑止が機能しないから」との見方もある。

 トランプ米大統領は9月7日、米国が中国との取引をやめたとしても米国が失うものはないと述べ、米中経済の「デカップリング」について改めて言及した。大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領が勝利すれば「米国は中国に所有される状態となり、(バイデン氏の勝利は)中国の勝利となる」と警告した。

 日米韓は8月29日にグアムで防衛相会談を開催する予定だったが、韓国が欠席した。今後、アジア地区の国際秩序も大きな変化が控えていると思われる。

 イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交を正常化合意も、「アラブの大義」(イスラム教徒の聖地であるエルサレムを異教徒の手に渡さないためのパレスチナ解放)の位置付けが後退しているとの見方がある一方、サウジ内政不安やイランとの対立激化につながるとの見方もある。

 アフリカではマリでクーデターが起きているが、マリはウラン産出国で、単に西アフリカ、マリだけの問題ではなく、核を巡るリスクが発生する可能性もある。

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このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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