金は下落、原油は上昇傾向に

著者:近藤 雅世
 8月に2089.2ドル(COMEXの金先物価格)と過去最高値を付けた金価格は11月末には1800ドルを割って300ドル近く下落している。これは金価格を押し上げていたのが金のETFを購入している金融投資家であったためだと思われる。金ETF以外の地金やコイン、宝飾品の現物需要は軒並み低迷している。金ETFを購入した投資家はもっぱら株式や債券投資を主とする人々であり、春先に新型コロナの蔓延により経済活動が停滞し、四半期GDPが前年度比大幅なマイナスに落ち込み、株価が暴落した。

 株を売った資金の保管場所が、長く続いているゼロ金利やマイナス金利のため、大口の資金は預金に戻せば金利が付かず、逆に預かり手数料を銀行から請求されるという事態であるため、資金の持って行く場所がなくなり、それが金のETFに向かった。

 まさかの時の金であり、安全資産としての一時的預かり場であった。こうした低迷した事態はいずれ解消すると思いたがるのが人情であり、それは90%以上の有効性を持ったワクチンが次々と開発されたというニュースで一気に膨らみ、株価は急騰した。金ETFに逃げていた投資家は金を売って株式市場に戻りつつある。この動きはまだ当分続くであろう。金ETFの残高は未だ多く、逃げ遅れた人々が争って金ETFを売り始めるのはこれからだと思われるためだ。今金取引で推奨するのは、空売りである。

 ただ、中国やインドの農民等は、貯蓄の手段として金を購入する人々であり、このところ金価格が高過ぎたため、半年以上金を買っていない。結婚式を先延ばしにしていた庶民は、コロナウイルスが収束すれば、インドでは花嫁の家族が、中国では花婿の家族が相手方に金の装飾品を贈答することになり、また祭礼では寺院に対して金を奉納する動きが復活するものと思われる。こうした恒常的な金需要が金価格の下落をどこかの段階で食い止めるだろう。過去形では金の需要と金価格の相関係数は0.85の高い正の相関関係にある。金ETF売却が一巡すれば、金価格は横ばいとなり、その後は、何事もなければ金価格は横ばいから緩やかな上昇に転じるだろう。

 一方、仮にコロナワクチンが効果を発揮してインフルエンザ並みの疾患にしてくれるなら、株式市場が夢見ている経済の復活が見られるかもしれない。少なくともそれを希望する投資家は多いことだろう。ということは、原油やプラチナ、パラジウム等の産業関連諸資材価格は値上がりし始めると思われる。長く下押しされていた商品ほど反発は大きいものと考えられる。

 なお、以上は全て、コロナが収束したらという前提に立っているが、実はそれは証券市場が夢見ているだけであって、まだ現実にはなっていない。今後のコロナ次第では、経済活動が復旧するという保証はない。

 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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