米シェール、“質”の頭打ち、半年前からの“数”の低迷が生産減少の要因

著者:吉田 哲
原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。48.23ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,883.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,840元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年02月限は315.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで830.8ドル(前日比9.5ドル縮小)、円建てで2,793円(前日比32円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月18日 20時1分頃 先限)
6,266円/g 白金 3,473円/g
ゴム 246.5円/kg とうもろこし 24,900円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米シェール、“質”の頭打ち、半年前からの“数”の低迷が生産減少の要因」

前回は、「原油固有の上昇要因:米シェール最主要地区の新規開発鈍化」として、EIA(米エネルギー省)が公表している統計から、米シェール主要地区のパーミアン地区の新規開発に関わる指標について書きました。

今回は、前回に関連し、「米シェール“質”の頭打ち、半年前からの“数”の低迷が生産量減少の要因」として、EIA(米エネルギー省)が公表している統計から、米シェール主要地区全体の開発・生産に関わる2つの指標に注目します。

以下のグラフは、米国のシェール主要地区における、新規1油井あたりの原油生産量と稼働リグ数です。新規1油井あたりの原油生産量は、生産が始まって間もない油井の生産効率を示すものであり、生産段階における“質”の要素と言えます。

また、稼働リグ数は、探索をして掘削をすると決めた場所で、坑井を掘り進めるために稼働している掘削機の数です。開発段階における“数”の要素と言えます。

同地区の原油生産量は、おおむねこれらの“質”と“数”の掛け合わせで決まると言ってもよいと思います。

以前の「米シェールは、もはや斜陽産業!? 回復しない同地区の原油生産量①」で一部、触れましたが、この数カ月間、米国のシェール主要地区の原油生産量は減少傾向にあります。この減少傾向に、この数カ月間の“質”と“数”の動向が関わっているとみられます。

その一因として、“質”の頭打ち感が鮮明になったことがあげられます。質の頭打ち感とは、生産効率を向上させる働きかけが限界に達したことを意味します。

1つの油井から少しでも多くの原油を取り出すため、坑井を地中で枝分かれさせたりするなどの“効率化”が進められてきたわけですが、それが限界に達し“質”が頭打ちになったと考えられます。

技術的な限界の他、3月から4月にかけて発生した原油相場の急落・低迷が尾を引き、効率化にかけることができる資金が限界に達した可能性も否定できません。

このような経緯を経て、“効率化”つまり“質の向上”が限界に達したとみられる点が、足元の同地区の原油生産量の減少につながっているとみられます。

また、“数”についてはグラフのとおり、7月以降、低迷しています。

掘削開始後、原油生産が始まるまで半年程度の時間を要します。

掘削後、生産を開始するために必要な作業が施されない坑井もあるため、一概に言えませんが、おおむね、足元の同地区の原油生産量は、半年程度前の掘削状況に依存していると考えられます。

このため、およそ半年前から続く稼働リグ数の低迷もまた、足元の原油生産量の減少の一因とみられます。先述の“質”、そして“数”の両方が、足元の原油生産量の減少の要因と考えられます。

“数”については、今後の同地区の原油生産量の動向を考える上で、重要です。仮に“数”が回復したとしても、それが原油生産量を増加させるには、半年程度の時間が必要とみられるためです。

“質”の頭打ち、半年前から続く“数”の低迷・・・米シェール主要地区は多難な状況にあると言えそうです。

図:米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量と稼働リグ数


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。