[Vol.938] プラチナ、1,450ドルも射程に入るか!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。61.55ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,784.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は15,205元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年04月限は399.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで510.1ドル(前日比5ドル縮小)、円建てで1,805円(前日比32円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月18日 18時11分頃 先限)
6,085円/g 白金 4,280円/g
ゴム 258.6円/kg とうもろこし 28,840円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ、1,450ドルも射程に入るか!?」

前回は、「プラチナの上昇要因。カギはビットコイン!?」として、足元のプラチナ価格の上昇と、ビットコインとの関係を考えました。

今回は、「プラチナ、1,450ドルも射程に入るか!?」として、中期的に底流するプラチナ相場の上昇要因について考えます。以前の[Vol.934] コロナ禍で貴金属市場に自我が芽生える!?でも述べた、金融緩和と“脱炭素”ブームの2点に注目します。

金融緩和は、カネ余り拡大→景気回復期待増→株式上昇要因発生、という経路で、消費のおよそ70%を産業用の用途で占めるプラチナの価格上昇要因になり得ます。また、金融緩和は金(ゴールド)の上昇要因にもなり得るため、貴金属のグループの代表格である金が上昇→つられてプラチナも上昇、という経路も想定されます。このため、金融緩和は、株高経路と、金高経路の2つの経路でプラチナ価格の上昇要因になり得ます。

また、“脱炭素”がさらにブーム化したり、ブームが実態に変貌を遂げたりした場合、プラチナに、当該要素起因の新しい需要が生まれる可能性があります。

プラチナは、化石燃料の代替エネルギーとして注目されている“水素”を生成する装置、水素をエネルギー源とし、空気中の酸素を取り込んで電気を発生させ、その電気でモーターを回転させて走る燃料電池車の発電装置の電極部分などに使われています。

“脱炭素”ブームに乗り、これらの分野が本格的に稼働し始めれば、プラチナに新しい需要をもたらすと、考えられます。“脱炭素”は、世界規模の、息の長い、超重要テーマであるため、とん挫したり、方針転換したりする可能性は低いとみられます。

金融緩和が行われている点も、“脱炭素”がブーム化した点も、もともとは、新型コロナの感染拡大が起きたことと関わっていると、筆者は考えています。

この意味では、新型コロナの感染拡大が鎮静化するまでは、金融緩和は続き、“脱炭素”のブーム化はさらに続く可能性があります。この点は、プラチナの中期はおろか、長期的な需要増加、つまり、価格の下支え要因として作用すると考えられます。

プラチナ価格は、仮に、投機の象徴とも言えるビットコインがなお、騰勢を強め、かつ、ジャンルを横断した多数の主要銘柄が上昇する“リスク・オン”が続けば、短期的にさらに上値を伸ばす可能性があると、筆者はみています。

仮にその後反落したとしても、今回述べた中期的な下支えが底流していることから、下げ幅は限定的となり、再び上値をトライする展開になると、考えています。

株高・金高、脱炭素ブームがさらに過熱化すれば、中長期的には、2014年7月の水準である1,450ドル近辺をうかがう可能性もあるとみています。

また、今後、貴金属4銘柄は、「[Vol.934] コロナ禍で貴金属市場に自我が芽生える!?」で述べたとおり、コロナ禍をきっかけに自我に目覚める(それぞれの変動要因でそれぞれの値動きを演じる)可能性があります。このため、次第に、金(ゴールド)とプラチナの価格差などの、従来の手法が通用しにくくなることが予想されます。

まずは、関連する材料を、短期や中長期など作用する時間軸ごとに分け、材料を俯瞰した上で、今後の動向を考えるようにするとよいと思います。

図:コロナ禍における、金融緩和と脱炭素ブームが与える貴金属市場への影響

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。