[Vol.937] プラチナの上昇要因。カギはビットコイン!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米国の主要産油地での供給懸念などで。60.55ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,787.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,680元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年04月限は378.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで547.75ドル(前日比28.35ドル拡大)、円建てで1,934円(前日比66円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月17日 19時49分頃 先限)
6,099円/g 白金 4,165円/g
ゴム 261.7円/kg とうもろこし 28,840円/t

●NYプラチナ先物(期近) 週足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナの上昇要因。カギはビットコイン!?」

前回は、「“環境・緩和・投機”、複合要素でプラチナ上昇」として、足元のプラチナ価格の上昇について、要因やポイントについて、筆者の考えを述べました。

今回は、「プラチナの上昇要因。カギはビットコイン!?」として、足元のプラチナ価格の上昇と、ビットコインとの関係を考えます。

多くの場合、投機資金の動向を伝える際、CFTC(米商品先物取引委員会)の非商業筋のネット(正味)の買いポジションの動向に注目しますが、同データは金曜日に公表され、かつその内容はその週の火曜日時点であるため、やや、速報性に欠けます。(いずれも現地時間)

このため、足元のプラチナ価格の急上昇を説明する上で、本欄では、投機的な値動きの最たるサンプルとも言える、ビットコインの動向を、投機筋の動向と仮置きします。以下のグラフは、ビットコイン価格とプラチナ価格の推移を示しています。

2月5日(金)を機に、ともに、騰勢を強めていることが分かります。この値動きが、以前の「[Vol.935] 先週(2月5日~12日)は、プラチナが大幅上昇」で述べた、ビットコイン+26.1%とプラチナ+11.1%の背景です。(程度(率)は異なれども、同日を機に騰勢を強めた点は同じです)

ドルと一部の穀物を除き、ほとんどの銘柄が上昇したため、全体的に“リスク・オン”だったと述べましたが、それを先導したのが、投機的な値動きの象徴とも言える、ビットコインで、プラチナはそれに最も近い位置で追随したと筆者は考えています。

つまり、ビットコインの急上昇が、全体的な“リスク・オン”のムードをより強め、その流れに乗じ、プラチナが上昇したのではないか、ということです。単純に、プラチナに投機資金が流れ込んでいるのではないか、というプラチナ単体の議論ではなく、全体のムードと、それを象徴するビットコインの動向を合わせて考えることが、先週のプラチナの値動きを説明する上で有用だと考えます。

ビットコインの急上昇は、電気自動車(EV)の分野で世界をリードするテスラが、自社のサービスにビットコインを組み入れることを表明した、また、カナダの当局が、世界初のビットコインETF(上場投資信託)を組成することについて承認する見通しとなった、など、昨年から続く、暗号資産の代表格であるビットコインの通貨としての立ち位置を向上させる動きが、さらに目立ったことによって発生したと考えられます。

目先、短期的に、投機の象徴とも言えるビットコインがなお、騰勢を強め、かつ、ジャンルを横断した多数の主要銘柄が上昇する“リスク・オン”が続けば、プラチナもそれらに追随し、短期的になお、上値を伸ばす可能性があると、筆者は考えています。

図:ビットコイン価格とプラチナ価格の推移


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。