金相場下落の背景と展望

著者:菊川 弘之
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 ドル円は今週、米長期金利上昇を背景に200日移動平均線を超えて上げ加速。一時106円台を付けたが、200日移動平均線や52週移動平均線の攻防が焦点。移動平均線が支持線に変化していくようなら中期的なトレンド転換が意識されてくるが、戻り売り圧力が高まるようなら、「グランビルの売り法則」がヒットする状況となる。

 この場合は、金は「グランビルの買い法則」がヒットする格好となる。内外の金相場と合わせて、ドル円の52週移動平均線の攻防にも注意を払いながら、金の長期トレンド認識を行いたい。

 ドル相場に関しては、金利上昇と金融緩和との綱引きが続きそうだが、ゴールドマンサックスは、「今後6か月ワクチン接種が推進されるにつれ、世界の経済成長はとても強くなる。ワクチン接種を始めた国では経済回復の期待が高まり、米国以外の市場も上昇に拍車がかかっている。既に高値圏にある米資産へのエクスポージャーの一部を他地域へ移そうとの考えも出てくる。そうなればドル安圧力となるだろう。」との見方も示している。3月にはレぱトリ絡みの円買い・ドル売りも予想される。

 今後、「良い金利上昇と共に株価が上昇」・「金利上昇にも耐えうる実体経済や株価の強さ」が出てくるなら、金は下降トレンドを演じるだろうが、実体経済と株価との乖離は広がる一方での株高(バブル)であり、パウエルFRB議長やイエレン財務長官が繰り返し述べているように、年末に向けての資産購入ペース縮小は時期尚早と否定している。2021年度の財政赤字は2.26兆ドル見通し(米議会予算局)だが、これに1.9兆ドルの経済対策を足すと財政赤字は4兆ドル規模となる。GDPに対する財政赤字の割合は、第二次世界大戦終結以来のレベルで、インフレリスクは高まり、FRBは金融緩和を続けざるを得ない。各市場でバブルは続くが、原油高・穀物高・非鉄高が足元で進む中、金利上昇が株価に悪影響を与える局面も意識されてくるなら、金は改めて買い直されてくるだろう。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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