[Vol.947] アドラー心理学と金市場分析の接点

著者:吉田 哲
原油反落。米主要株価指数の反落などで。60.78ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,710.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は15,200元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年04月限は399.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで549.9ドル(前日比15.9ドル拡大)、円建てで1,920円(前日比35円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月4日 19時11分頃 先限)
5,909円/g 白金 3,989円/g
ゴム 265.8円/kg とうもろこし 29,020円/t

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「アドラー心理学と金市場分析の接点」

前回は、「OPECプラスは“増産”するのか!?」として、3月4日(木)に予定されている、OPECプラスの閣僚会議で決定する可能性がある、“増産”について、考えました。

今回は、「アドラー心理学と金市場分析の接点」として、長期的な取り組みである純金積立を行うにあたり、筆者が考える、金市場を分析する上でのヒントについて書きます。

ベストセラー「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀史健 著)を読んだことはありますか。アルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」を熟知した哲人と、反駁しながらも本音をうち明けながら哲人に教えを請う青年との対話形式で進行する、同心理学を解説する名著です。

アドラー心理学は、自己受容、他者承認、他者貢献を3つの柱とし、原因論を否定・目的論を肯定します。また、人生は刹那という点の連続だとして、「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当て続けることが重要だとしています。

筆者がこの本を手にしたきっかけは、生涯学習を体現するため、とある大学の通信課程に入学するための課題(レポート)の題材に選んだことだったのですが、読み進めるうちに、アドラー心理学が、現在のさまざまな市場を分析する上で必要な考え方につながる、と感じるようになりました。

とくにそう感じたのは、アドラー心理学が「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てる“現在凝視”を重視する点でした。筆者がこれまで考え、述べてきたことと非常に近い点が、「嫌われる勇気」で述べられていたのです。

アドラー心理学が金相場を分析する上で役立つのは“現在凝視”を重視した上で、過去へのこだわりを捨てる重要性や意味を説いている点です。

これまでは、往々にして“有事の金”に代表される有事と金の関係のみであったり、株と金の逆相関のみであったり、ドルと金の逆相関のみであったり、単一の材料で金相場の動向が語られることがありました。

単一の材料で金相場の動向を説明するやり方は、過去の常識になりつつあると、筆者は感じています。

北朝鮮がミサイルを数十発発射して“有事”と言われた2017年のNY金の騰落率がわずか+12%程度だったことや、2020年8月の史上最高値更新前の1カ月間、金だけではなく株も上昇していたことなどを考えても、現代の金相場は単一の材料で説明できるほど、単純ではないと言えます。

つまり、過去の常識に縛られていては、現代の金相場を正しく分析することは困難と言えるわけです。以前の「純金積立、6つのテーマの現在を俯瞰せよ」で述べましたが、金相場を取り巻くテーマは一つではありません。

短中期的には3つ、長期的に3つ、合わせて6つは存在し、状況に応じ、それらのいくつかを同時に意識しなくてはなりません。

アドラー心理学の“現在凝視”や“過去から自分を切り離す”ことは、現代の金投資において非常に重要な考え方だと、筆者は感じています。

図:アドラー心理学の特徴


出所:岸見一郎、古賀史健 著「嫌われる勇気」よりに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。