週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.86ドル安の59.59ドル、ブレント原油は同1.79ドル安の63.07ドルとなった。

 前週末の海外原油は海外マーケットがグッドフライデーの祝日で休場となる中、動意ない推移となった。

 先週は特段の新規材料がみられない中で方向感に乏しい展開が続いた。週明けはOPECプラスが5~7月にかけて、サウジアラビアの自主減産も含めて日量200万B超増産することで合意したことから需給の悪化が懸念されたほか、米金利の上昇でドル高推移したことが重しとなり軟調な推移となった一方、先週末に発表のあった雇用統計の内容が好調だったことから下値は抑えられた。翌6日は前日に下落した自律反発の動きで買われると、ドル高が一服したことや中国や米国の好調な経済指標を受けて石油需要回復への期待感が高まり堅調な推移となった。翌7日はEIA統計において製油所稼働率がコロナ以前の水準まで回復していることや原油在庫が減少していたことが好感された一方、ガソリンなど製品在庫の増加やイラン核合意の復活に向けての協議が進展していることが重しとなり強弱まちまちな展開となった。週末にかけてはドル安・株高推移が支えとなったものの、アストラゼネカ製ワクチンの接種が制限される中でワクチン接種ペースの鈍化が警戒されていることや、米新規失業保険申請件数が2週連続で増加したことで景気の先行き不透明感が強まったことが重しとなり上値重い推移となった。



 底堅いとの意見も多数見受けられるもの、高値調整が終わったと言い切るのは早いのではなかろうか。減産縮小に不満の需要国はサウジ産の購入を削減、中国・イランとの連携強化や米国とイランの間接協議など、イラン産増産への懸念もあるが、OPECプラスの減産縮小に米国のプレッシャーがあったとの見方など、世界的に(とくに需要サイドから)原油高を歓迎しない風潮が出てきているように見受けられる。テクニカル的には翌週というスパンではレンジ相場の可能性が高そうではあるが、上を追う材料の乏しさから上値は抑えられやすく、レンジを下方にブレイクするリスクが高いと見受けられる。ただし、長いスパンで見るならばワクチンの普及による需要の改善などから押し目買いを肯定する材料も多く、一段の調整待ちの状況とみる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。