[Vol.997] 価格上昇=需要増加にならない?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。64.52ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,863.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,290元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年07月限は421.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで647.2ドル(前日比4.5ドル拡大)、円建てで2,268円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月19日 18時3分頃 先限)
6,547円/g 白金 4,279円/g
ゴム 244.4円/kg とうもろこし 33,240円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「価格上昇=需要増加にならない?」

前回は、「昨年末から銅需要はやや減少中」として、前回の「期待先行相場」に関連し、2019年1月以降の世界の銅需要の推移について書きました。

今回は、「価格上昇=需要増加にならない?」として、前回述べた、銅や石油の需要が2020年11月ごろから減少・横ばいになっていることに関わる、「実態なきインフレ」について、筆者の考えを述べます。

必ずしも、「価格上昇=需要増加」にならないケースがあります。このようなケースにおいて、商品価格の全体的な上昇(インフレ)を説明するには、「実態の需要動向以外の全体的な上昇要因」と「実態の需要動向以外の個別の上昇要因」に着目することが重要です。

以前の「期待先行相場は、対象を入れ替えながら膨張」で述べた「期待先行相場」は、まさに、「実態の需要動向以外の全体的な上昇要因」の一つです。図示すると、以下のようになります。

実際の需要動向を省いた上で、全体・個別を階層化して考えることで、必ずしも需要が十分でなくても、コモディティ(商品)価格全体が上昇し得る(インフレが起き得る)ことがわかります。

端的に言えば、個別に供給懸念があり、同時に金融緩和と期待を膨張させる全体的な材料があれば、たとえ需要が不十分でも、インフレは起き得る、ということです。筆者はこのような状態を「実態なきインフレ(物価高)」と呼んでいます。

図:「実態なきインフレ」のイメージ


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。