週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.45ドル高の70.28ドル、ブレント原油は1.13ドル高の72.51ドルとなった。

 前週末4日は、上昇した。為替がドル安に振れたことに支援されて、前日の米エネルギー情報局(EIA)の週報での原油在庫の減少などが再び材料視された模様。

 先週も引き続き底堅い展開が継続した。7日は反落の展開となった。欧州や米国など主要国経済が正常化に向かい石油需要は回復しているものの、中国貿易統計で、5月の原油輸入量が前年比14.6%減となり上値を抑えた。翌8日は反発。米エネルギー情報局(EIA)が月報で、ニューヨーク原油、ブレント原油の今年の年間平均価格を前回より前者を5%、後者を4.7%上方修正したことを材料視した。9日は小幅に反落。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週報で、原油在庫の大幅減少が示されたものの、ガソリン、留出油ともに増加を示し製品需要が低下したことが利食いを誘発した。10日は、石油輸出国機構(OPEC)が今年の需要見通しを従来の日量9646万バレルから同9658万バレルに上方修正したことを材料視し底堅い動き先行したが、米国がイラン元当局者など3名や、2つの企業に対する制裁を解除したことでイランの原油制裁の解除が連想されたことから相場は一時急落したものの安値からは大きく切り返した。本日11日も前日の安値修正の動きとなってはいるが、イラン交渉を控えていることもあり上値を追うには至らず、相場は膠着ムードとなっている印象である。



 テクニカルでは直近ブレント原油は今年3月の高値を更新、2019年9月、2020年1月の72ドル弱の高値を突破した状況で、2019/4月76ドル前後の上値を目指すチャートと見受けられる。10日にはイラン高官への制裁解除の報受け一時大幅に売られはしたが、おおむね切り返し底堅い動きを続けている状況である。目先イラン交渉の前進はストップロスを巻き込みやすい注視すべき材料ではあるが、市場への影響が不透明なイラン復帰への注目よりは、着実に起こりつつあるコロナ禍からの需要回復への期待が現状は勝っているようだ。株式や為替が膠着しているように値動きが膠着しやすい状況ではあるが、押し目買いが優勢となりやすいと思われる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。