週刊石油展望

著者:三浦 良平
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比0.46ドル高の70.74ドル、ブレント原油は0.19ドル高の72.70ドルとなった。

 前週末の海外原油は上昇。EIAが月報で2022年末には原油需要が新型コロナウイルス禍以前の水準に回復すると見込まれていることからOPECプラスは生産を拡大する必要があると示したことや、欧米で経済が正常化に向かっていることが要因となった。

 先週は石油需要の回復期待から底堅く推移していたものの、FOMCにおいて利上げ前倒しが示唆されたことによりドル高となり、週後半は調整売りが進んだ。週明け14日は小動き。引き続き、年後半には世界的に石油需要の回復が見込まれていることが支えとなったが、英国でコロナウイルスの変異株が流行し都市封鎖が4週間延長されたことや、FOMCを控え利上げ観測の前倒しへの警戒感が重しとなった。15日は堅調。石油需要回復期待は変わらずだが、イラン大統領選までのイラン核合意の最終合意が厳しくなっていることから、イランの供給再開見通しが後退したことも支援要因となった。16日は小動き。EIA週報で原油在庫が-735万Bと市場予想を上回る取り崩しとなり一時買われる場面も見られたが、高値では利食い売りに上値を抑えられた。その後FOMCで2023年末までに2回の利上げが示唆されたことでドル高となり上値を削る展開となった。17日は下落。前日FOMCで利上げが示唆されたことでドル高が進み、商品全般が売られる展開となった。円高ドル高となり、リスクオフムードとなった模様。



 テクニカルでは直近ブレント原油は今年3月の高値を更新、2019年9月、2020年1月の72ドル弱の高値を突破した状況で、2019/4月76ドル前後の上値を目指すチャートと見受けられる。10日にはイラン高官への制裁解除の報受け一時大幅に売られはしたが、おおむね切り返し底堅い動きを続けている状況である。目先イラン交渉の前進はストップロスを巻き込みやすい注視すべき材料ではあるが、市場への影響が不透明なイラン復帰への注目よりは、着実に起こりつつあるコロナ禍からの需要回復への期待が現状は勝っているようだ。株式や為替が膠着しているように値動きが膠着しやすい状況ではあるが、押し目買いが優勢となりやすいと思われる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。