[Vol.1064] 「正のエネルギー」が各所で吹き飛ぶ

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。67.83ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,787.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は14,350元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年10月限は433.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで802.65ドル(前日比4.65ドル拡大)、円建てで2,810円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月26日 14時45分頃 先限)
6,315円/g 白金 3,505円/g
ゴム 215.1円/kg とうもろこし 34,470円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「正のエネルギー」が各所で吹き飛ぶ」

前回は「あえて、リスクの数をかぞえる」として、なぜ今、リスクの存在を確認する必要があるのかを、考えました。

今回は「「正のエネルギー」が各所で吹き飛ぶ」として、世界に存在する4つのリスクが、この数カ月間でどのように変化したのかを確認します。

アフガニスタンが20年ぶりにタリバンの支配下に置かれました。そして、コロナからの景気回復を先導してくれると期待が高まった中国が、景気回復鈍化にあえいでいます。

また、昨年春から幅広い市場をかさ上げしてきた米国の金融緩和が、段階的に終わる可能性が高まっています。さらに、デルタ株の拡大が世界経済の回復を阻んでいます。今回から数回にわたり注目するリスクは、世界で今、発生している以下の4つです。

1.アフガニスタン情勢の悪化
2.中国の景気回復鈍化
3.米国でのテーパリング議論開始
4.デルタ株感染拡大

世界で発生するリスクは枚挙にいとまがありません。まさに世界は今、リスクの海に溺れようとしているのかもしれません。

米国が20年の歳月をかけて、2,000名を超える米兵の尊い命と2兆ドルという莫大(ばくだい)な資金と引き換えに築き上げてきたアフガニスタン(以下、アフガン)の和平への道は、このたった1カ月で閉ざされました。

そして、世界の景気回復をリードすると期待された中国では、足元、規制強化や教育問題など、景気回復を阻害する要素が続出しています。同時に、足元、他の主要国と同様、デルタ株の拡大に頭を悩ませています。

また、米国の金融緩和は昨年春から本格化し、株価指数、コモディティ(商品)、暗号資産など、幅広い市場を一様に「かさ上げ」してきましたが、足元では、テーパリング(段階的な金融引締め)の議論が強まっています。このことで、逆に米国の金融政策は、これまでかさ上げされてきた市場の足かせになっています。

さらに、人類は今まさに、ワクチンという武器を手に、コロナとの戦いに挑んでいますが、デルタ株の感染拡大を前に、いまだ劣勢に立たされています。昨年11月にワクチンを手に入れ、歓喜に沸きましたが、今はそのムードはみじんもありません。

「良くなりそう」。さまざまな事象が改善に向かう際に発生する「正のエネルギー」が各所で積み上がっていましたが、アフガンでも中国でも米国でも、そしてコロナにおいても、こうしたエネルギーはこの数カ月間のうちに、一気に吹き飛んでしまいました。

次回以降、これらのリスクの共通点を考えます。

図:事態の悪化が目立ち、リスクが拡大している


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。