[Vol.1066] 逆転で生じた「負のエネルギー」は膨大に

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.09ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,817.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は13,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年10月限は438.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで813.5ドル(前日比0.5ドル拡大)、円建てで2,854円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月30日 18時15分頃 先限)
6,404円/g 白金 3,550円/g
ゴム 206.5円/kg とうもろこし 34,260円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「逆転で生じた「負のエネルギー」は膨大に」

前回は「バイデン政権、FRB、あなた方もか!?」として、足元のバイデン政権とFRBの政策の状況について述べました。

今回は「逆転で生じた「負のエネルギー」は膨大に」として、もともと期待されていた事象が一転して懸念に変わったときに起き得る事象について、筆者の考えを述べます。

前回、トランプ政権から交代し、期待が集まっていたバイデン政権にて「米国第一主義」化がじわりと進行していると述べました。また、前々回は、アフガニスタン情勢、中国の景気動向、米国の金融政策、新型コロナの感染状況などの、もともと改善に向かっていたにもかかわらず、事態が悪化した例を挙げました。

リスク拡大が進行し、各所で積み上がっていた「正のエネルギー」が吹き飛んだわけです。こうした場面で想起されるのは、「可愛さ余って憎さ100倍」という言葉です。

可愛いという気持ちが大きければ大きいだけ、何かの拍子でいったん憎しみが沸いた時、その憎しみは甚大なものになる、という意味です。

アフガンでは和平への道ができつつあった、中国は昨年、世界的なコロナからの回復を先導する期待の国だった、金融緩和は各種市場が安定的に上値を切り上げ続けるムードを醸成した、ワクチンがコロナ撲滅を強く期待させた…。振り返れば数カ月前まで、世界は「正のエネルギー」で満ち溢れていたわけです。

しかし、今はどうでしょうか。アフガンでも中国でも米国でもコロナの分野でも、エネルギーは正から負に転じました。例えて言えば、世界のさまざまなところで「可愛さ」が「憎さ」へと転じるケースが、発生したわけです。

可愛さから転じた「憎さ」が甚大なものになるのであれば、世界のさまざまなところでリスクを振りまく「負のエネルギー」は膨大な規模になり、そしてさらに、それらが束になる可能性があります。このことは、金(ゴールド)市場のテーマの一つである世界規模の「有事のムード」の拡大に他なりません。

図:エネルギーの方向性が逆転


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。