[Vol.1072] 積立は2つの条件がそろった時、利益が大きくなる

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。69.00ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,817.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は13,720元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年10月限は456.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで805.15ドル(前日比6.95ドル縮小)、円建てで2,847円(前日比16円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月7日 17時58分頃 先限)
6,413円/g 白金 3,566円/g
ゴム 205.4円/kg とうもろこし 34,300円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「積立は2つの条件がそろった時、利益が大きくなる」

この数回、金やプラチナなどへの投資手法の一つでもある、積立について述べています。前回は、「『逆』パターンの評価額の回復難易度は低い」として、およそ28万口を保有する「逆パターン」で、基準価額がいくらになれば評価額が17万円になるのか(累積のマイナスが0円になるのか)、また、仮に、評価額30万円という目標を立てたとして、正パターン、逆パターン、それぞれ基準価額がいくらになれば、その目標を達成することができるのかについて、書きました。

今回は、「積立は2つの条件がそろった時、利益が大きくなる」として、前回までの4回で述べたことを踏まえ、積立投資の収益が最大化するために必要な条件について、書きます。

大人気投資信託の「正」と「逆」のパターンの違いから考えられる、積立投資の鉄則とも言える点は2つあります。「効率的に数量を増やすこと」、そして「効率的に収益化すること」です。

これらに直接的に関わる「価格」については、「今は低位安定」そして「最後に上昇」することが重要です。

コロナ禍に入り、米国の主要株価指数を「とっかかり」として積立をはじめた方の中で、未来永劫、価格が上昇し続けることは難しいだろう・・・と感じている方は特に、「積立」をする対象を見直す準備をしてみるのも、一計だと思います。(全額ではなく、現在積立投資に振り向けている資金一部でも)

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲンのスキャンダル発覚を機に出現した、主要用途である自動車の排ガス浄化装置向け需要が急減するという、まことしやかに語られたうわさによって、プラチナ価格は2015年から長期的に低迷しました。

かたや、同じ貴金属の金(ゴールド)は、2020年8月に史上最高値となる1グラムあたり7,000円をつけるなど、長期的には強い状態が続いています。プラチナと金、「低位安定」は、どちらか、答えはプラチナでしょう。

もちろん金(ゴールド)も、今後も上値を伸ばす可能性がある投資対象だと、筆者は考えています。ただし今回テーマにしている「積立」という点で言えば、長期的に「低位で安定」してきたプラチナはその趣旨に合致します。また、「最後に上昇」も期待できるかもしれません。

EV(電気自動車)の台頭により、プラチナの主要需要である自動車の排ガス浄化装置向け需要の減少が減少する可能性がありますが、多くの先進国が目指す「脱炭素」のあるべき姿の一つ、「水素社会」が実現した場合、グリーン水素の生成装置向けやFCV(燃料電池車)の発電装置向けなどの、これまでになかった新しい需要が増加する可能性があります。

こうした、「脱炭素」という、もはや不可逆的と言える世界共通のテーマと強く関連する可能性を秘めたプラチナの価格は、超長期的に見て、反発する方向に向かう可能性があると、筆者はみています。この点は、「積立」における、「最後に上昇」に大きく貢献する可能性があります。

積立の鉄則である「効率的に数量を増やすこと」と「効率的に収益化すること」を実現するために必要な値動きである「今は低位安定」と「最後に上昇」の両方を、プラチナ相場は満たすことができると、筆者は考えています。

図:積立投資の効率を高めるために必要な2つの条件


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。