[Vol.1076] 銀の太陽電池向け需要は10年で大きく成長

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.33ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,790.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は13,525元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年11月限は460.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで843.15ドル(前日比7.55ドル拡大)、円建てで2,991円(前日比20円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月13日 17時27分頃 先限)
6,332円/g 白金 3,341円/g
ゴム 200.7円/kg とうもろこし 34,000円/t

●NY銀先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「銀の太陽電池向け需要は10年で大きく成長」

前回は、「中国の太陽電池企業の株価は2年で8倍に」として、太陽電池のセルとモジュールの生産で圧倒的なシェアを誇る中国の、関連企業の株価を確認しました。

今回は、「銀の太陽電池向け需要は10年で大きく成長」として、太陽電池向けの銀の需要動向と、今後の銀価格の超長期的な推移の見立てについて書きます。(直近3回で、銀と太陽電池、そして太陽電池に関連する中国株について書きました。同テーマは今回で終わります)

銀が太陽電池の電極部分向けに使われていることは、Silver Instituteの統計で確認できますが、統計内で「Photo-Voltaic(太陽電池)」の記載が確認できるようになったのは、実はごく最近のことです。2014年以前の統計にはまだその記載がありません。当時は、注目すべき需要とみなされておらず、「産業利用」の一部という扱いでした。

2015年の統計で初めて記載された時、その規模の大きさに驚いた人もいるのではないでしょうか。デジタルカメラの台頭などで需要が急減した、写真のフィルム向け需要(2014年時点で1,419トン)にとって代わる、銀の重要な需要の一角として、太陽電池向け(同1,862トン)が躍進したことが明らかになりました。

以下のグラフのとおり、太陽電池向けの銀需要の増加は目覚ましいです。2020年までの10年間でおよそ2倍、銀の全需要に占める太陽電池向けのシェアは約10%にまで成長しました。

銀の急激な太陽電池向け銀需要を支えてきたのが、中国とみられます。前々回のとおり、太陽電池セルの製造において、中国は圧倒的なシェアを占めているためです。温室効果ガスの排出で突出する同国としては、太陽電池の製造を増やすことで、環境配慮を行っているというアピール効果も期待できるでしょう。

同時に、中国が、「ペロブスカイト型」の太陽電池の量産を開始するポーランドのスタートアップ企業のように高い技術を持ち合わせれば、技術の中国という印象を醸成することもできるでしょう。諸問題が山積して半ば内憂外患状態にあるといってもおかしくない中国としては、好印象をつくるため、「脱炭素」に関わる太陽電池の分野で、量・質ともに世界をリードしていきたいとの思惑は少なからず働いているとみられます。

この意味で、銀の主要な消費に成長した太陽電池向け需要は、今後も増加する可能性があるでしょう。そして中国以外の主要国たちも「脱炭素」への取り組みを推進しながら、銀への注目を強める可能性があるでしょう。

現在の銀価格は、1トロイオンス24ドル近辺です。超長期的には、人類が「脱炭素」をあきらめない限り、細かな上下はありながらも、銀価格は上値を伸ばし続ける展開となるのではないでしょうか。例えば、2011年に付けた40ドル超は、あながち絵空事ではないかもしれません。

図:銀の太陽電池向け需要とシェア


出所:Silver Instituteのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。