[Vol.1130] OPECプラス、予定通りの減産幅縮小にとどめるか

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。66.03ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,778.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,935元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年01月限は441.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで843.55ドル(前日比12ドル縮小)、円建てで3,030円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月2日 14時14分頃 6番限)
6,449円/g 白金 3,419円/g
ゴム 242.7円/kg とうもろこし 37,780円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「OPECプラス、予定通りの減産幅縮小にとどめるか」

前回は、「変異株の発生は防ぐことができた?」として、各種銘柄の先月末と先週末の騰落状況を確認した上で、金(ゴールド)価格がおおむね横ばいだった背景について、筆者の考えを述べました。

今回は、「OPECプラス、予定通りの減産幅縮小にとどめるか」として、12月2日(木)の日本時間夜に開催予定のOPECプラスの会合について、筆者の考えを述べます。

OPECプラス(※)の会合は12月2日(木)です。OPECプラスは、2021年9月以降、毎月、会合を開催しており、翌月の原油生産量の方針を決定しています。

※OPECプラス:OPEC(石油輸出国機構)に加盟する13カ国と、ロシアなどの非加盟国10カ国、合計23カ国で形成する産油国のグループ(2021年11月時点)。米国は含まれていない。世界全体の原油生産のおよそ半分を占める。

以下のグラフは、OPECプラス内で減産に参加する20カ国(イラン、リビア、ベネズエラは対象外)の原油生産量の推移と、生産量の上限のイメージを示しています。

OPECプラスに関するニュースを見聞きすると、OPECプラスが一体何を行っているのか、見えにくい場合があります。「OPECプラス増産」「OPECプラス減産規模縮小」などの見出しが同時に出ることがあるためです(増産中なのか減産中なのか、わかりにくい)。

OPECプラスは今、減産期間の最中にあります。グラフ内右上にある「減産基準」を基準に、生産量を何バレル削減するか、を毎月議論しています。この基準となる量は、2022年5月に引き上がり、引き上げ後の基準は、同年12月まで適用されることになっています(減産体制は2022年12月まで続く)。

ではなぜ、「増産」というキーワードを含んだニュースの見出しが、同時に存在するのでしょうか。それは、少しずつ、生産量の上限を引き上げ、それに基づいて生産量を増やしているためです。グラフ内の青色の点線が、生産量の上限のイメージです。

生産量の上限を引き上げることと、減産規模縮小は同義です。どちらも、生産できる量を増やすこと、だからです。こうした背景があり、OPECプラスに関するニュースの見出しに、「増産」と「減産」が混在しているのです。

報じられているとおり、今年の夏以降、米国、日本などの石油消費国は、OPECプラスに対し、増産を要請してきました。高水準で推移する原油価格を下落させ、国民の生活と密接なガソリンなどの小売価格を下げるためです。

グラフの通り、OPECプラスは、今年8月以降、毎月日量40万バレルずつ生産量の上限を引き上げ、増産をしてきましたが、消費国の要請は、原油相場の下落に資する「想定を超える過剰な減産縮小(増産)」でした。

こうした要請に対し、OPECプラスは受け入れない姿勢を貫いてきました。原油相場が下落することを避けるためです(原油相場の下落は産油国にとって収益減少要因)。

12月2日(木)に会合が予定されていますが、この会合でOPECプラスはどのような決定を下すのでしょうか。

この1カ月間で、消費国が「高い」と批判してきた原油相場は、およそ20%、下落しています。このことにより、消費国が抱いてきたインフレ(物価高)への懸念が一時的に遠のき、消費国の産油国に対する増産要請の温度感が低下したと考えられます。

同時に、OPECプラスが「想定を超える過剰な減産縮小(増産)」を検討する余地が、小さくなったと考えられます。このため、今回の会合も、これまで通り、「計画的な増産」を続けることでまとまる可能性があります。

この点は、過剰な増産が行われることが回避された、という意味で、原油相場に上昇圧力をかける要因になると、考えられます。

図:OPECプラスの原油生産量 単位:千万バレル/日量


出所:ブルームバーグのデータ、OPECの資料より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。