[Vol.1138] 本格的な「ディーゼル否定」には至らない

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.59ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,782.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は14,725元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年02月限は471.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで869.75ドル(前日比14.85ドル拡大)、円建てで3,130円(前日比28円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月16日 13時26分頃 6番限)
6,526円/g 白金 3,396円/g
ゴム 233.0円/kg とうもろこし 37,860円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「本格的な「ディーゼル否定」には至らない」

前回は、「2022年のプラチナ。多くの時間帯で上昇圧力が勝る」として、筆者が考える、2022年のプラチナ市場にかかる、上昇圧力と下落圧力の全体像について、述べました。

今回は、「本格的な「ディーゼル否定」には至らない」として、2022年のプラチナ市場における、「脱炭素」起因の下落圧力について、筆者の考えを述べます。

2015年のフォルクスワーゲンのスキャンダル発覚により、プラチナ価格が急落すると考えられたのは、プラチナの主な用途が、自動車の排ガス浄化装置向けであるためでした。当時、同スキャンダル発覚が、プラチナの当該需要を急減させると、多くの人が考えました。

ただ、下図のとおり、自動車1台あたりに使われる排ガス浄化装置向け需要は、2015年以降、増加しています。

環境保護先進国の集団である欧州だけでなく、米国、日本、中国などの主要国は、断続的に、排ガス規制を強化しています。各国は、自らに課した厳しい規制に対応すべく、排ガス浄化装置の性能を向上させる必要に迫られていると、考えられます。

その結果、1台あたりに使用される貴金属の量が、増加していると考えられます。自動車の生産台数が減少したからといって、必ずしも、プラチナの当該需要が減少することにはならないのです。

「脱炭素」3年目の2022年も、排ガス規制の強化の流れが継続することから、当該需要は、増加する可能性があると、筆者は考えます。

半導体不足により、自動車の生産台数が減少している点は、プラチナ価格の下落要因の一つですが、今回述べた1台あたりの消費量の増加は、その減少を一定程度、軽減、あるいは相殺して余りある規模になる可能性もあると、筆者はみています。

図:自動車1台あたりに使用される、排ガス浄化装置向け貴金属の量


出所:ジョンソンマッセイおよびOICAのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。