ウクライナ情勢とインフレを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
ブックマーク
 「ミンスク合意」に関する4カ国協議(ロシア・ウクライナ・仏・独)が1月下旬、2019年以来となる会合がパリで開催され、マクロン大統領は8日の記者会見で、協議の進展に期待感を表明。ゼレンスキー大統領が「合意を履行する意思を確認した」と明らかにしたものの、ウクライナ議会において「ミンスク合意」を実施する過半数票が獲得できる見通しは立っていない。

 ドイツ、フランスを仲介者として2015年に結ばれた「ミンスク合意」では、停戦とともに、東部の親ロシア派支配地域に一定の自治権付与が含まれ、テロリストと呼んできた親ロシア派に恩赦を与えることを定めている。この「ミンスク合意」は国連の安全保障理事会でも決議されている。

 ドネツスク人民共和国(DNR)とルガンスク人民共和国(LNR)は存在して既に8年。ロシアの社会保障システムと教育システムが実施され、ロシアから財政支援を受け、圧倒的多数がロシア語を話し、ウクライナに戻るつもりはない。DNRとLNRにいるロシアパスポートを所有する市民の数は、652,000人(人口の3分の1)。いかなる制裁があろうともプーチン大統領に、ここを見捨てる選択肢はない。

 注目スケジュールは以下の通り。外交交渉が上手くいかなければ、デッドラインに到達する可能性は低くない。

2月16~17日:北大西洋条約機構(NATO)国防相理事会
2月20日:北京オリンピック閉幕
2月20日以降:米国から、新しい制裁が宣言される可能性。
2月23日:ロシアの祝日(赤軍の日・祖国防衛軍の日)。

 この日までに解決策が見つからなければ、直接衝突の可能性は増大する。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

http://market-samurai.livedoor.biz/