週刊石油展望

著者:三浦 良平
ブックマーク
 先週末のWTI原油は先週比0.67ドル高の56.25ドル、ブレント原油は0.55ドル高の60.80ドルとなった。

 前週末の海外原油マーケットは、中国が米製品に対して報復関税を発表したことで株式相場が急落し、原油も景気減速や石油需要の後退懸念から売りが強まる展開となった。パウエルFRB議長の講演では利下げ期待が高まりドル安・株高が進む場面も見られたが、米中貿易戦争への懸念がリスク回避姿勢を強め株式相場、ドル円ともに売りが加速した。さらに週末にトランプ大統領が中国に対し対抗措置を講じると表明したことで一段安となった。

 週明け26日は、中国側から米国担当者に通商協議を再開したいとの連絡があったと伝わったことで株高から原油も買いが先行したものの、フランスのマクロン大統領がイラン大統領とトランプ大統領の会談の準備を進めていると明らかにしたことでイラン産原油の流通が拡大するとの思惑から売り優勢となると、マイナスサイドまで値を沈めた。27日は、米中貿易摩擦の激化が警戒されていることは重しであったが、EIA統計で原油在庫の減少が期待されていることから買い戻し優勢となった。朝方発表のあったAPI統計では原油在庫が-1110万Bと大幅な減少が示されたことが好感されると上げ幅を拡大し、高値圏で堅調な推移となった。EIA統計が28日発表され、原油在庫が1000万B減少と市場予想に対して大幅な取り崩しとなったことが好感され上昇した。原油生産量は過去最高水準を更新した一方で、原油輸入が低水準だったことや製品需要の底堅さが在庫減少につながったとみられる。ガソリンと留出油の在庫もそろって200万超B減と、それぞれ予想を上回る結果を示す内容であった。29日も在庫減少を好感した買いが継続し、3日続伸。また、ハリケーン「ドリアン」が「カテゴリー3」以上に発達しフロリダ州東部に接近する見込みで、こちらも相場を押し上げることとなった。さらに、9月に予定されている米中の閣僚級貿易協議の進展が期待され米株相場が大幅続伸したことも支援材料となった。

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。