[Vol.1236] 西側も原油市場に上昇要因を提供している

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。112.00ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,826.13ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は13,070元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年07月限は723.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで894.28ドル(前日比5.58ドル拡大)、円建てで3,746円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月17日 17時22分頃 6番限)
7,583円/g
白金 3,837円/g
ゴム 243.7円/kg
とうもろこし 58,530円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「西側も原油市場に上昇要因を提供している」

前回は、「原油100ドル付近でのらりくらり」として、ウクライナ侵攻が始まってから足元までの、原油相場の値動きについて書きました。

今回は、「西側も原油市場に上昇要因を提供している」として、ロシアのウクライナ侵攻の動機を、過去にさかのぼって考えます。

侵攻直後、西側は制裁を科せば、ロシアはすぐに音を上げる(ロシアがすぐに降伏して戦争が終わる)と踏んでいた節がありましたが、現在、ロシアはその制裁すら逆手に取って、逆に優位な立ち位置を享受しているように見えます。

西側が制裁の「跳ね返り」によるインフレで経済的なダメージを負っているのを傍観しながら、自らは原油高による恩恵を享受しています。このような事態に陥っているのは、「[Vol.1230] 「パラドックス」とは?」で述べたように、西側自身に「パラドックス(自己矛盾)」があるためです。

足元、西側が経済制裁を強化すればするほど、世界全体のエネルギー供給量が減少する懸念が強まり、エネルギー価格が上昇し、インフレが加速しています。

そして、そのインフレを受け、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めを強化し、金融市場では不安が拡大しています。制裁を科せば科すほど、西側は自分たちを困難な状況に追い込んでいるわけです。(パラドックスに陥っている)

ロシアは、開戦前から、西側が科す制裁や講じる政策が、エネルギー価格を上昇させること(西側がパラドックスに陥ること)を認識していた可能性があります。開戦前日(2月23日)、ドミトリー・メドベージェフ露安全保障会議副議長は「(欧州ガス価格が高騰する)新しい世界にようこそ」とツイートしていました。

また、およそ100年前のロシア革命の指導者レーニンの言葉「資本主義を破壊する最善の方法は通貨を堕落させる(インフレを起こす)こと」が、現実になりつつあるわけです。

図:ロシアのウクライナ侵攻の動機と西側への影響


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。