原油、上値リスク高い

著者:菊川 弘之
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 「OPECプラス」は6月2日、原油を追加増産することで合意した。

 声明で「9月の生産調整を前倒しして、7、8月に配分し直す」とした。7~9月の3ヶ月間にわたり毎月43万2千バレルずつの予定だった減産縮小(事実上の増産)を、7、8月の64万8000バレルずつに置き換えることになる。

 ただ、追加増産が決まったものの、ウクライナ侵攻による制裁で落ち込んだロシアの生産減を補うには十分ではない。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、4月のロシアの生産量は計画に対し日量134万バレルの未達だった。欧州連合(EU)が5月末に合意したロシア産石油の禁輸など米欧日の制裁が続く限り、回復は見込みにくい。アフリカの産油国なども生産目標割れが続いている。

 「OPECプラス」は、これまで増産目標を達成できていない産油国は年内で生産を拡大し、未達分を埋め合わせするとしたが、目標を達成できるのか不透明。大幅な増産が可能なのはサウジアラビアとアラブ首長国連邦の2国となっている中、バイデン政権になって以降、サウジと米国の関係は悪化しており、増産圧力をかけてくる米国には増産を急ぐ姿勢をみせつつ、身内のロシアには実質は変わらないと説明できる双方に配慮した内容。

 次回協議は6月30日に開く。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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