[Vol.1276] 原油は「ウクライナバンド」に支えられ高止まり

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。101.69ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,731.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は12,685元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年08月限は677.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで891.1ドル(前日比20.1ドル拡大)、円建てで3,940円(前日比34円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月12日 16時45分頃 6番限)
7,627円/g
白金 3,687円/g
ゴム 249.8円/kg
とうもろこし 48,500円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油は「ウクライナバンド」に支えられ高止まり」

前回は、「昨年末比、エネルギーと穀物が高い。金属は下落」として、主要銘柄の騰落率を確認しました。

今回は、「原油は「ウクライナバンド」に支えられ高止まり」として、ウクライナ危機発生後の原油相場の推移を確認します。

昨年末以来の推移において、マイナス圏に入った銘柄が複数ある中で、なぜエネルギーと穀物はプラス圏で推移しているのでしょうか。いまだ解消の糸口が見えない「ウクライナ危機」起因の、供給懸念が解消されていないためです。

ロシアは今、自国のエネルギーや穀物の出し渋りをしていたり、港を封鎖してウクライナ産の穀物を輸出できないようにしたりしています。こうした供給懸念は、ウクライナ情勢が鎮静化しないかぎり解消されません。

FRBをはじめとした西側主要国の中央銀行たちの多くは、金利を引き上げてインフレを退治しようとしていますが、足元のインフレが景気過熱型(デマンド・プル型)ではなく、供給懸念型(コスト・プッシュ型)であるため、その効果は限定的といえます。

「足元、さまざまなコモディティ価格が下落しているのは、利上げが功を奏しているためだ」と耳にすることがありますが、これは正しい表現ではありません。利上げによる「副作用」によってコモディティ価格が下落しているのです。

「ウクライナ情勢の鎮静化」という決定打が出ないため、以下のとおり原油相場は100ドル近辺という、歴史的に高い水準で推移し続けています。下が95ドル前後、上が112ドル前後のレンジ相場が続いています。

ウクライナ危機発生を機に、明確に100ドル超が常態化しています。このレンジは、ウクライナ危機があり続ける以上、存在し続ける可能性があるため、「ウクライナバンド」と呼ぶことにします。

「利上げ」は市民の身の回りの品々の価格を下げる手段になり得ても、そうした品々の根源にある原油相場を下げる決定打にはなり得ません(副作用で下がることはあるにせよ)。

西側が望む高インフレの根本解決に資する、原油相場の大局的な下落トレンドをつくることができるのは、供給懸念の解消(≒ウクライナ情勢の鎮静化)または需要急減、あるいはその両方です。

図:NY原油先物(期近)日足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近)日足

出所:マーケットスピードⅡのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。