[Vol.1280] 暴落によって大きくなったプラチナの2大利点

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。99.75ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,709.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は11,940元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年09月限は663.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで854.35ドル(前日比0.15ドル拡大)、円建てで3,819円(前日比22円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月19日 16時50分頃 6番限)
7,546円/g
白金 3,727円/g
ゴム 241.6円/kg
とうもろこし 46,410円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「暴落によって大きくなったプラチナの2大利点」

前回は、「原油高が続いてしまう可能性は否定できない」として、バイデン氏がもくろむ「サウジ増産」のほか、サウジを含む主要産油国の原油生産の状況について、書きました。

今回は、「暴落によって大きくなったプラチナの2大利点」として、プラチナ相場の足元、そして長期の推移を確認します。

足元、金属相場が急落しています。貴金属に分類される金(ゴールド)、プラチナ、銀、産業用金属に分類される亜鉛、鉛、アルミニウム、銅、錫(スズ)の価格は、昨年末に比べると、大きく下落しています。2桁下落はざら(あたりまえ)です。

金属相場に暴落の嵐が吹き荒れていることがきっかけで、数十年単位のプロジェクトである、積立などの長期投資との親和性を高めた銘柄があると、筆者は考えています。「プラチナ(白金)」です。

この暴落により、プラチナ価格はこれまでよりも、さらに一層、2008年に発生したリーマンショック直後の安値水準(800ドル前後)に接近しました(下図 右の赤矢印と点線)。

この安値水準は、同ショック後の10数年間、「長期視点の底値」として、プラチナ相場を下支えしてきました。

プラチナの長期視点の底値は、1980年代から2000年代にも存在しましたが(350ドル前後)、リーマンショック後、現在の水準に切り上がりました。こうした長期視点の底値の変化は、パラダイムシフト(均衡点の劇的な変化)と呼ばれることがあります。

同ショック直後の安値が長期視点の底値になっている例は、小麦、大豆、トウモロコシなどの穀物でもみられます。

また、現在のプラチナ価格は、リーマンショックの直前につけた史上最高値(およそ2,000ドル)の半値以下です。長期視点の高値と現在の価格の差は、長期視点の今後の価格動向における上昇余地になり得ます。

プラチナは暴落の嵐によって、「長期視点の底値にさらに近づき」、「長期視点の上昇余地をさらに拡大させた」、と言えるでしょう。今、プラチナにおける長期投資に重要な二つの要素が大きくなっていると、考えます。

図:プラチナと金(ゴールド)の価格推移(月間) 単位:ドル/トロイオンス
図:プラチナと金(ゴールド)の価格推移(月間) 単位:ドル/トロイオンス

出所:世界銀行のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。