[Vol.1360] 今は株・有事よりも「ドル」の動向が重要

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。84.81ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,780.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,650元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年01月限は646.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで739.85ドル(前日比4.05ドル縮小)、円建てで3,493円(前日比19円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月15日 17時39分頃 6番限)
7,949円/g
白金 4,456円/g
ゴム 220.9円/kg
とうもろこし 46,630円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「今は株・有事よりも『ドル』の動向が重要」
前回は、「『反撃の狼煙(のろし)』が出現!?」として、NY金(ゴールド)先物の価格推移を確認しました。

今回は、「今は株・有事よりも『ドル』の動向が重要」として、ドル指数、ドル建て金(ゴールド)、CRB指数の価格推移を確認します。

しばしば、「株価が上昇している時、金(ゴールド)価格は下落する傾向がある」と耳にしますが、足元、そのような値動きにはなっていません。また、「有事(戦争や大規模な何らかの危機)が起きた時、金(ゴールド)価格は上昇する傾向がある」とも言われますが、足元、やはりそのようにはなっていません。

現代の金(ゴールド)相場が、以前のようなシンプルな作りでないことは、ウクライナ危機勃発後に下落したことが証明してくれています。「有事の強弱」だけ、「株との比較」だけで説明できるのであれば、ウクライナ危機勃発後、金(ゴールド)相場は大暴騰しているはずです。(有事と株安の相乗効果)

短中期的な金(ゴールド)価格の動向を考える上で必要なことは、「有事ムード」、「代替資産(株の代わり)」、「代替通貨(ドルの代わり)」の「三つの側面から同時に観察する」ことです。ゆめゆめ、わかりやすいから、直感で、などの理由でどれか一つだけを切り取ってはいけません。

以下のグラフのとおり、今年6月から10月まで、金(ゴールド)相場が下落したのは、「有事ムード」と「代替資産」起因の上昇圧力を、「代替通貨」起因の下落圧力が上回ったためです。上昇圧力は確かに存在した、しかしそれを上回る下落圧力が存在した、だから(有事でも株安でも)金(ゴールド)相場が下落した、という説明です。

11月に入り、金(ゴールド)相場が急反発しています。株高でも金(ゴールド)相場が急反発しているのは、株高由来の下落圧力を上回る上昇圧力が存在しているためです。上昇圧力は主に「ドル安(代替通貨)」由来です。

図:ドル指数、ドル建て金(ゴールド)、CRB指数の推移(2022年6月1日を100)
図:ドル指数、ドル建て金(ゴールド)、CRB指数の推移(2022年6月1日を100)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。