[Vol.1374] 高止まりを支えるのは「ウクライナ危機」

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。77.02ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,783.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は12,935元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年01月限は544.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで783.5ドル(前日比9.7ドル拡大)、円建てで3,497円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月6日 17時19分頃 6番限)
7,786円/g
白金 4,289円/g
ゴム 220.4円/kg
とうもろこし 44,600円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル
シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「高止まりを支えるのは『ウクライナ危機』」
前回は、「農産物相場は長期視点で引き続き高水準を維持」として、食料価格指数の推移について、述べました。

今回は、「高止まりを支えるのは『ウクライナ危機』」として、筆者が考えるウクライナ危機を起点に考える農業を取り巻く環境について、述べます。

以前の「[Vol.1372] 『分断』起因の金相場への上昇圧力は長期化か!?」で述べたとおり、ウクライナ危機は、さまざまな非西側諸国(旧ソ連諸国、ロシアに隣接するアジア諸国、産油国、南米・アフリカの資源国)による、化石燃料の使用を否定する「脱炭素」や、独裁国家の立ち位置を低下させる「人権重視」などの「西側」が推進する考えに反発する動きを共鳴させ、彼らを結束させるきっかけになっていると考えられます。同危機は、西側と非西側の「思想の対立」の上に存在すると言えます。

国連の機能不全が叫ばれて久しく、世界規模の分断を仲裁できる第三者を発見することが難しい状態はしばらく続く可能性があります。「同危機は2023年も続く」というのが筆者の現時点の考えです。

以下の通り、2022年2月に勃発した同危機は、さまざまな経路で食料の需給や価格動向に影響を与えています。各種農産物相場は、同時多発する同危機起因の上昇圧力にさらされているわけです。同危機は、世界の「分断」を深めたり、西側の「脱炭素」を加速させたりしています。

それらの影響により、「自由貿易のムード停滞(囲い込み・出し渋り・輸出させずが横行)」、「植物由来の原材料需要増加(西側でバイオプラスチック・燃料などの需要増加)」、「化学肥料の供給減少による単収低下懸念(脱炭素と出し渋り起因の同肥料供給減少懸念)」が、同時発生し、食糧不足懸念と食料価格高騰観測が浮上しています。

ウクライナ危機が継続すれば、こうした懸念・観測も継続すると考えられます。次回以降、「化学肥料の供給減少による単収低下懸念」について述べます。

図:ウクライナ危機を起点に考える農業を取り巻く環境(筆者イメージ)
図:ウクライナ危機を起点に考える農業を取り巻く環境(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。