[Vol.1390] ウクライナ危機、同危機起因の需給ひっ迫は続く

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.70ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,811.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は12,815元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年02月限は559.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで781.95ドル(前日比8.45ドル縮小)、円建てで3,467円(前日比18円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月28日 17時13分頃 6番限)
7,765円/g
白金 4,298円/g
ゴム (まだ出来ず)
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ウクライナ危機、同危機起因の需給ひっ迫は続く」
前回は、「『まし』なインフレが需要回復『期待』を増幅」として、筆者が考える2023年の原油市場を取り巻く環境について、述べました。

今回は、「ウクライナ危機、同危機起因の需給ひっ迫は続く」として、EUの主要国からのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額について、述べます。

ウクライナ危機勃発をきっかけに、「西側」と「非西側」の間にある溝が深まっていると、筆者は考えています。

筆者は、非西側とは、旧ソ連諸国+ロシアと隣接する一部のアジア諸国+産油・産ガス国+南米・アフリカの資源国などの、ウクライナ危機勃発を機に、さまざまな「反西側」を共通認識として距離を近づけつつある国々であると、考えています。

国連が機能不全に陥っていることもあり、仲裁に入る第3国を探すことは困難です。このため、溝が埋まらない状況が続く、つまり、同危機が長期化する可能性があります。

同時に、エネルギー流通における「買わない西側・出さないロシア」の構図も、長期化する可能性があります。

目下、EU(欧州連合)は、ロシアへの制裁の意味で、ロシア産のエネルギー(化石燃料)を買わない姿勢を鮮明にしています。

以下のグラフのとおり、同危機が勃発した翌月以降、ロシア産のエネルギー輸入額は急減しています。代わりに米国を中心に、サウジや地中海の対岸にあるリビアなどからの輸入が増加しています。

しばしば「玉突き的な需給ひっ迫」という言葉を耳にします。

これは、「買わない」姿勢を強める欧州でエネルギーの需給ひっ迫が起き、それを支援するために主要なエネルギー生産国が欧州向けの輸出を増やし、その結果、もともとこれらの主要なエネルギー生産国から輸入していた国々で、需給ひっ迫が発生する様子を示す言葉です。

同危機起因で発生している欧州におけるエネルギーの需給ひっ迫は、世界全体のエネルギー需給をひっ迫させているわけです。

危機が長期化すれば、世界全体のエネルギーの需給ひっ迫も長期化する可能性があります(2023年を含めた長期にわたる原油相場の上昇圧力に)。

そして昨日、プーチン大統領は、同国産エネルギーに上限を設定した国への原油の輸出を禁止する大統領令に署名しました。「出さない」もまた、鮮明になっています。

図: EUの主要国からのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額 単位:百万ユーロ
図: EUの主要国からのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額

出所:EURO STATのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。