[Vol.1538] インフレ再来ではない、緩やかな上昇継続か

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。82.03ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,968.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,990元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年09月限は622.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1050.2ドル(前日比3.20ドル拡大)、円建てで4,690円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月4日 18時03分時点 6番限)
8,865円/g
白金 4,175円/g
ゴム 198.0円/kg
とうもろこし 40,810円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「インフレ再来ではない、緩やかな上昇継続か」
前回は、「原油:産油国の自国保護のための上昇圧力も」として、主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格について、述べました。

今回は、「インフレ再来ではない、緩やかな上昇継続か」として、主要三銘柄の価格推移について、述べます。

前々回の小麦、前回の原油と同様、プラチナの上昇率も、13連騰の間のNYダウの上昇率を上回りました。米国発の「需要増加観測」と「他通貨建て・同商品に対する割安感醸成」という二つの上昇圧力に加え、プラチナ特有の経路で複数の上昇圧力が発生したことが、上昇率を大きくしたと考えられます。

「他通貨建て・同商品に対する割安感醸成」の要因である「金利低下観測」が、「株高」と「金(ゴールド)」高のきっかけとなり、その株高は、プラチナの産業向け需要拡大期待を増幅し、金(ゴールド)高は、貴金属相場全体の上昇ムードを醸成し、それぞれプラチナ相場に上昇圧力をかけたと、考えられます。

また、プラチナ相場がもともと持っていた特徴である、自身の長期視点の高値に比べて割安(足元の価格は2008年につけた記録的高値の半値以下)、金(ゴールド)に比べて割安(足元の価格は金(ゴールド)の半値程度)、という点が意識された可能性があります。

プラチナ相場は、株高・金(ゴールド)高時に上昇しやすい傾向があると、言えるでしょう(金(ゴールド)は、NYダウ13連騰時、2.2%上昇した)。市場全体(株式・通貨・コモディティ・債券など横断的に見て)の材料の上位に「FRB(米連邦準備制度理事会)の緩和的な方針」が位置している場合は特に、こうした傾向がみられやすくなると考えられます。

ここまでの数回、13連騰したNYダウよりも上昇率が高くなった、小麦、原油、プラチナ独自の材料について、確認しました。今と状況が変わらなければ、まだしばらく、株高、小麦、原油、プラチナ高が続く可能性があります(原油は90ドル程度まで上昇する可能性も)。

小麦と原油の価格が高くなると、インフレ再発→FRB再度利上げ→米景気悪化、と連想しそうになりますが、実際のところ、以下のとおり、足元の価格は2022年の急騰時のピークよりも大幅に安い水準にあります(小麦はピーク比44%安、原油はピーク比34%安)。

目先、小麦、原油(プラチナも含め)などの価格が上昇しても、その上昇が緩やかなものであれば、景気を悪化させることはないと、筆者は考えています。このシナリオにはFRBの方針が極めて強く関わるため、その動向を注視する必要があります。

図:主要三銘柄の価格推移(2023年7月7日を100として指数化)
図:主要三銘柄の価格推移(2023年7月7日を100として指数化)

出所:Investing.comのデータを用いて筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。