週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は先週比0.74ドル安の53.80ドル、ブレント原油は0.73ドル高の59.57ドルとなった。

 前週末はイランのタンカーがサウジのジェッタ港付近で爆発したとの報から中東の緊張感が高まり上昇した。イランはサウジアラビアやイスラエルの関与を疑っており、地政学リスクが意識される格好となった。

 先週は米中貿易戦争の先行き不透明感や原油在庫増加が重しとなる一方、年末のOPEC総会をにらんだ追加減産への思が支えとなり動意ない推移となった。週明けは米中通商協議において口頭での合意には至ったものの合意文書の作成には3~5週間かかる見通しで、中国側は正式合意の前に詳細を詰める協議を望んでいると伝わったことから正式合意の難航が警戒され売り優勢となった。翌15日も米中貿易戦争の先行き不透明感が嫌気され売りが先行したが、OPEC事務局長が石油市場の安定のためにできることは何でもすると発言したことから下げ止まると、株式の上昇などもあり下げ幅を縮小する動きとなった。週中は年末のOPEC総会をにらんだ追加減産への思惑から買いが先行したものの、9月の米小売売上高が弱かったことで石油需要の下振れが懸念され上げ幅を縮小した。また、API統計で原油在庫が+1050万Bと予想以上の増加幅となったことも嫌気された。週末にかけてはEIA統計での原油在庫の大幅増加や米経済指標の悪化が嫌気され軟調に推移していたものの、英国とEUの離脱協定案が合意に達したとの報で世界的な景気減速懸念が後退しプラスサイドまで上昇した。ただ、再び戻りは売られると中国のGDPの伸びが悪かったことや、米国がEUから輸入する航空機やワインなどに追加関税を発動したことで米欧の貿易戦争の激化が懸念され上げ幅を削った。

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。