サウジより低い!?米国の原油輸出国としてのリスク

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。56.07ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,508.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は11,845元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。19年12月限は452.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで573.45ドル(前日比4.05ドル縮小)、円建てで1,985円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(10月25日 16時43分頃 先限)
 5,247円/g 白金 3,262円/g 原油 38,440円/kl
ゴム 168.1円/kg とうもろこし 24,140円/t(5番限)

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジより低い!?米国の原油輸出国としてのリスク」

前回は「増加し続ける米国の原油輸出量①」として、米国の原油輸出量に注目しました。今回は相手国別の原油輸出量に注目します。

2019年7月時点で米国が最も原油を輸出したのは韓国で日量53万1000バレル、2位がカナダで日量42万バレル、3位が中国で日量22万9000バレル、4位がオランダで日量19万7000バレル、5位が英国で日量18万5000バレルでした。

米国の原油輸出先上位10カ国において(2019年7月時点)、東アジア+インド(韓国、中国、台湾、インド、タイ)の5カ国合計で日量114万2000バレル(全体の42.4%)、欧州(オランダ、英国、イタリア)の3カ国合計で日量49万1000バレル(全体の18.2%)でした。

以前の「サウジの原油輸出の60%は東アジアとインド向け」で述べたとおり、サウジの原油油輸出量の60%が東アジアとインド向けです。(2017年時点)

原油を輸入する側である日本や中国、韓国、インドなどにとって、サウジで供給不安が起きることは大きな懸念です。

逆に、サウジにとって、東アジア・インドの国々の景気が悪化し、消費が鈍化することは大きな懸念です。

お互いがメリットを享受し合うには、サウジは原油の安定供給を継続すること、東アジア・インド諸国は経済成長を継続することが必要です。

お互い、高い度合いで依存し合っているわけです。

一方、米国の東アジア+インド向けの原油輸出は42.4%と、サウジのそれに比べれば低いです。

欧州向けでは、サウジは9.5%でしたが、米国は18.2%とサウジよりも高いです。

全体的には、米国はサウジよりも輸出先が分散していると言えます。

その意味では、原油の供給国として抱えている、消費国の消費量が減少し、輸出量が減少するリスクは、米国の方がサウジに比べて低い、と言えます。

図:米国の相手国別原油輸出シェア(2019年7月)
米国の相手国別原油輸出シェア

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。