[Vol.1648] 金(ゴールド)市場にも負の出来事

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.76ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,010.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,860元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年03月限は560.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1116.4ドル(前日比0.50ドル縮小)、円建てで5,321円(前日比7円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月18日 17時41分時点 6番限)
9,563円/g
白金 4,242円/g
ゴム 269.8円/kg
とうもろこし 36,850円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)市場にも負の出来事」
前回は、「小頻度でテスト当日に都市部で大雪」として、大学入学共通テスト(共通一次試験・センター試験含む)期間中の最大降雪量について述べました。

今回は、「金(ゴールド)市場にも負の出来事」として、小頻度の大規模な負の出来事が生んだイメージと実態について述べます。

前回述べた小頻度の大規模な負の出来事の影響を受けた経験がある市場があります。金(ゴールド)市場です。戦争という負の出来事が発生し、資金の逃避先として注目を集め、価格が一時的に急騰しました。1970年代後半の出来事です。このことで多くの人が知る「有事の金買い」というイメージが生まれました。

「いつも雪」は共通テスト日の大都市での大雪、「有事の金買い」は世界を驚かせる規模の戦争という、ともに小頻度の大規模な負の出来事によって醸成されました。イメージを醸成するきっかけとなった出来事が小頻度であるため、危機感が保持され、イメージが持続しています。

「いつも雪」も「有事の金買い」も、それらを醸成した大規模な負の出来事が、それを目の当たりにした多くの人の心と頭に刻み込まれているため、現在でも否定されることはほとんどありません。

情報網が極限まで発達した現代社会では、良くも悪くもイメージが拡散しやすい状態にあります。このため、一度醸成された強いイメージは社会に居座る傾向があります。

全国的に共通テストの日に降雪が確認されにくくなっていても「いつも雪」が支持されているのと同じように、市場環境が変化して有事だけが価格動向を左右する要因だと言い切れなくなっても「有事の金買い」は支持されています。確かに有事は今でも重要なテーマですが、現在は同時に有事以外にも注目しなければならないテーマが複数あることに留意しなければなりません。

戦争という過去に起きた小頻度の大規模な負の出来事が生んだイメージである「有事の金買い」は、1970年代後半は金(ゴールド)相場を説明するのに十分な効果がありました。

しかし現在は、戦争が目立っていなくても、米国の金融緩和や新興国の台頭、中央銀行の買いなどが目立てば金(ゴールド)相場は勢いよく上昇することがあります。それが何よりの証です。今、有事は金(ゴールド)相場の全部ではありません。一部です。

図:小頻度の大規模な負の出来事が生んだイメージと実態
図:小頻度の大規模な負の出来事が生んだイメージと実態

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。